小川義文

YOSHIFUMI OGAWA

2021-3-15

写真家になったきっかけは何ですか?

子供の頃から三度の飯よりクルマが好きでした。特に映画の中に登場するスポーツカーや美麗なクルマを見ることが大好きでした。クルマに対する独自の見方を考えたり、クルマの背後に潜む時代のイメージを読み取ったり、クルマの存在理由を追及したり。そんなクルマに対する想いを写真化してみたいと思うようになりました。写真が好きというよりも、クルマが好きで自動車写真家になったようなものです。

ご自身の写真に一番大きな影響を与えたものは?

過去に何人もの作家(小説家)と取材で世界中を旅してきました。アフリカや南太平洋、南米などの秘境にも出かけました。作家と写真家は仕事「旅」のパートナーでありライバルです。旅という体験を共有し共通のテーマにもとづいて仕事をするものの、旅の最中に「このようなものを撮ってほしい」と指示されることもないし「どのようなことを書くのか」を聞くこともありません。作家と写真家の焦点が合致すれば良い結果(表現)を得ることができるわけです。私は文章も写真も心象の変化の表現であり、たとえ実在する風景であっても対象はつねに作者の脳裏にあり、その場の空気感や二人の対話(言葉)に触発され、それぞれの知識というフィルターを通して独自の表現に到達すると考えます。多くの作家と旅を経験し、心象の表現を具現化するという意味を吸収したことで、何を撮るべきかが見えてくるようになった気がします。

ハッセルブラッド X1D II 50Cの気に入っている点を教えてください。

性能とデザインの両立、これはとても大事なことですね。性能も必要ですがデザインにもこだわりたいという私のようなユーザーも多いはず。グラファイトカラーをまとったアルミ削り出しによる美しいボディ。操作面でも大型背面モニターのタッチ操作、EVFを覗きながらのタッチパッドも使いやすく、撮影シーンによって使い分けています。このカメラを使い込めば、中判デジタルカメラであることを意識せず、ストレスなく撮影できるようになります。

中判デジタルカメラの実力はどのようなシーンで実感されますか?

いまやデジタルカメラの性能は人間の視覚認識を凌駕しています。肉眼で見た「現実」がいかに不確かなものであるか、写真(画像)によって思い知らされることがあります。その中でも中判デジタルカメラが取り込む情報量は写真家があらかじめ伝えたかった以上のものすら光線的存在として現出させます。私が撮影するクルマ、風景、花。どれも共通して被写体の質感や立体感、その場の空気感や色彩の濃淡まで写し込みたくなります。速写性が求められない状況なら、迷わず中判デジタルを使いたくなります。

小川さんは、カメラだけでなく、クルマや時計、靴など、こだわりの品の数々をお持ちですが、小川さんはどのような基準で道具を選ばれますか?

モノを選ぶ基準は、「デザイン、質感、性能、使い易く」ですね。そのどれかが欠如した場合は購入には結びつきません。「憧れとこだわり」というのもありますね。まさに私にとって往年のハッセルブラッドが憧れのカメラといえる存在です。プロ御用達のカメラであり、多くの名作を生み出した名機としても知られています。500シリーズのファインダーを上から覗き混むスタイルは写真家の象徴にさえ思えました。知れば知るほど憧れが強くなるカメラですね。

今後のご予定や目標などあれば、教えてください。

3月後半は京都で桜の撮影。昨年にもハッセルブラッド X1D Ⅱ50Cで取り組んでいます。アマチュア写真家育成を目的とした小川義文監修「第7回花の写真FBグループ展」を9月に開催します。

プロフィール 

小川義文 東京都出身。写真家。自動車写真の第一人者。国内外のさまざまな自動車メーカーの撮影を手がける。広告写真では日本広告雑誌対象など多数の受賞歴がある。自らの写真論をまとめた「写真家の引き出し/幻冬舎」、写真集「小川義文自動車/東京書籍」など著書も多数。小川義文監修「花の写真FBグループ展」は今年で7年目を迎える。またラリードライバーとして「パリ・ダカールラリー」「トランス・シベリアラリー」などに出場した経験も。日本広告写真家協会、日本自動車ジャーナリスト協会会員。

 

Facebook:https://www.facebook.com/yoshifumi.ogawa.9

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桑島智輝

Tomoki Qwajima

1978年岡山県岡山市生まれ。写真家。
2002年に武蔵野美術大学卒業後、鎌田拳太郎氏に師事。
2004年に独立後、雑誌やタレント写真集、広告で活躍している。
2013年に、約2年半の安達祐実を収めた写真集「私生活」(集英社)を発表。
2019年に写真集「我我」(青幻舎)、2020年に写真集「我旅我行」(青幻舎)を発表。

使用機材:X1D II 50C

Instagram @qwajima

Website https://qwajima.com/

金澤正人

ニューノーマルヌード

日本の広告撮影の第一人者として資生堂のクリエイティブの撮影を手掛けながら、ご自身の作品のプロジェクトでも精力的に活躍されている金澤正人さん。今回は907X 50Cを使って今の時代への想いを込められた作品を制作されました。

TAKAKI_KUMADA

XHコンバーター0 ,8で撮る

ファンタジー調ポートレート

長年のHシステムユーザーとしてコマーシャルフォトの第一線で活躍され、最近では907Xも導入いただいているフォトグラファーのTAKAKI_KUMADAさん。今回はXHコンバーター0,8を手に、その世界観を自由に表現していただきました。特別な撮りおろしの作品をKUMADAさんによる新しいコンバーターのインプレッションと合わせてお楽しみください。

TAKAKI_KUMADA

2004年独立。

モード誌、CDジャケット、広告のほか、ファッション・ムービーやCFの撮影も手がける。

使用機材:

907X

CFV Ⅱ 50C

H5X

H2

503CW

500C

Website : takakikumada.com

ロレンツォ・バラッシ

LORENZO BARASSI

ミラノのデザイン学校を卒業、1995年よりアシスタントとしてカメラマンに従事。1998年、ミラノで自身のスタジオを構え、広告、ファッション、雑誌、CDカバー等のフォトグラファーとして活動。2002年よりフリーへ転向、2008年より現在も東京をベースに広告、デジタルクリエイターとして活動。2011岩手県陸前高田にて、Italians For Tohoku (東北復興のためのイタリア人会)の一員として支援活動を行う。2016年より日本製ドレスブランドのデジタルプロダクション(ウェブサイトやソーシャルメディア等)マネジメント等も手掛ける。照明を駆使したアーティスティックな作品を得意とする。

使用機材: X1D-50c, H4D-40

Website: https://www.lnz.it/

Instagram: @ellennezeta

戎康友

YASUTOMO EBISU

写真館を営む祖父と父の影響で日本大学芸術学部写真学科へ進学。卒業後、写真家として独立。

アメリカやヨーロッパを旅しながら現地の人々を撮影した ポートレイト作品を発端に、ファッション誌のエディトリアルや広告、 アーティストまで、ポートレイトを中心に活躍。

使用機材: H6D-100c, X1D II 50C

Website: http://www.ebisuyasutomo.com

Instagram: @yasutomoebisu