ロンドン在住のフリーランスフォトグラファー、ステファン・スウィーニーはロンドンの大都会を駆け回りながらポートレートや広告写真を撮ってきました。それがこの数か月は、家にいることを強いられ、普段していることをできずに過ごしています。両親と4人の兄弟と共にロックダウンを過ごすうちに、彼はこの珍しい「ひとつ屋根の下」のシチュエーションをクリエイティブに活かし、6人の家族を美しく照らし出したポートレートを撮ることを決めました。

ロックダウンが始まる前は、どのような写真を主に撮っていましたか?

ポートレートと広告写真を撮っていました。中でも特に個人的な作品の撮影の被写体やテーマを選ぶときは、いつも主張の強い個性的な人物を撮ることに惹かれていたように思います。私はそういう人たちと関わるのが大好きですし、撮影を終えてそのような人たちが普段他には見せない内面を見ることができたと感じる時、他者と強く繋がっている感覚があります。様々な人を撮影すればするほど、人は一人一人が特別な個性を持っていると確信できます。

このロックダウンの情勢はあなたの撮影にどのような影響を与えましたか?

私のようなフリーランスにとっては、常に撮影の案件がある状態を保つことが非常に重要になります。しかしそれはこのロックダウンで完全に崩されてしまいました。しかし、商業撮影の機会がないと明確に分かる状況だからこそ、次の仕事を探すことにやきもきするよりも、はっきりとした目的がなくとも、自分の創造性に身を任せ、しがらみなく個人的な作品撮りをすることに専念できました。撮影することの純粋な喜びが再燃しています。思いがけず与えられた新鮮さです。

誰とロックダウンを過ごしていますか?

家族全員、つまり4人の兄弟、そして両親です。最近では全員が揃ってひとつ屋根の下で過ごすことはめっきり減っていました。なので、偶然にも当分の間共に過ごすことになり感謝しています。もちろんそれは6人も被写体が身近にいることだけでなく、それぞれの生活がある今、家族として長い時間を過ごすことはこの先見込めないからです。このような特別な出来事には感謝を示し、記録に残す価値があると思います。

家に閉じ込められながら創造性を保つためにどのような工夫をしていますか?

私にとっては、この隔離を強いられる期間というのは自分を見つめ直す良い機会になりました。これはクリエイティブ作業を行う中で重要なプロセスにもなり、新たなアイディアが生まれるきっかけにもなります。今は、この新しいものを創りだしたいという衝動を、家族を撮ることによって発散しています。他にも、塀越しの隣人のポートレートのシリーズにも取り組み始めました。これはこの情勢をドキュメンタリーとして記録するいい機会なだけではなく、全てが落ち着いたあとに庭のバーベキューに招待する新しい友達を作ることにも役立っています!

今回の家族の撮影では、ライティングにどのようなテクニックを用いていますか?

場所や使える機材に制約があるため、普段使う機材とはまったく別のライティングのセットを組んでいます。つまり、普段多用している大きなソフトボックスやオクタボックスの代わりに、例えば壁や傾斜のある天井に光をバウンスさせることで似たような効果を得ることもありますし、空間をより効果的に利用し、イメージするライティングに近づけています。

母を撮った写真では、アクセサリーを付けないストロボヘッドにそれぞれオレンジとブルーのゼラチンフィルターを付け、隣り合う壁と天井にバウンスさせました。似たように、朝のランニングに向かう兄弟を撮った写真では玄関のドアの外にゼラチンフィルターを付けたヘッドを設置し、バウンスさせたストロボをカメラの右側に配置し、大きなオクタボックスのような効果を狙いました。このようなソフトでありながら指向性のある光源がとてもシネマチックな効果を生みます。ほとんどの写真を美しい午後の光の下で撮ったことや、家の中の様々な構造や角度の利点を生かしていることも、これらの写真の構図とライティングに役立っています。

これら美しい家族のポートレートを撮影するうえで、X1D IIはどのような利点がありましたか?

ハッセルブラッドX1D II 50Cの中判フォーマットで撮影することは、イメージの中の機微をはっきりと強調してくれます。色の諧調の豊かさ、ハイライトからシャドーへのグラデーションの滑らかさ、そして異次元の細部の描写力によって、わずかなディテールすらもはっきりと立ち現れます。実用的な視点では、高解像度のファインダーから目を離さず各画像の露出をリアルタイムでプレビューできることにより、直ちに実現したい環境光とストロボのバランスを調整することができました。

家の中で撮影することのコツはありますか?

我が家のユニークな特長を生かすことは独特な構図とライティングを実現するうえで大きく役に立っています。どの角度が目を引くか?一日のどの時間帯に陽は理想的な当たり方をするか?家具を動かしたり、簡単なセットを組むことはできるか?このように家を見つめ直すこと自体が楽しみとなり、カメラの中に思い描くイメージが実現されるまで実験を繰り返しました。皆さんもゆっくり楽しんで、自らに課題を与え、驚きを発見しましょう!

撮影技術に限らず、新しいスキルを身につけるための素晴らしい時間であることもわかりました。何か学びたいこと、ブラッシュアップしたいことがあれば、この有り余る時間があるうちに取り掛かりましょう。

ステファン・スウィーニーについて

ステファン・スウィーニーはスコットランドに生まれ、イギリス国内やアメリカ、ドイツそしてベルギーを回った後、現在はロンドンを拠点としています。「ずっとアーティストそしてクリエイターとして生きてきましたが、20代半ばまでは主に音楽を通じて表現をしていました。しかしビジュアルにもこだわりを持つ人間にとって、カメラを手に取り、視覚を通じた表現を撮るということはとても魅力的な行為で、自然と自分の人生の大半を占めるようになりました。」とステファンは語ります。他者と繋がり、交わりたいという強い情熱は、ステファンをポートレートの世界へと導き、それは彼の中心となりました。彼の他の作品はこちらから

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