5月のアイスランドでは、夜になっても日はまだ高い位置にあり、真夜中まで日が暮れることはありません。
フォトグラファーOttavio Giannellaは、X1D II 50Cを持って、イタリアからドイツのフランクフルトへ移動した後、アイスランドのケプラヴィーク空港へ飛びました。40分かけて車でレイキャネス半島にある丘まで行き、2時間かけて徒歩で、目的地であるファグラダルスフィヤル火山まで向かいました。
ファグラダルスフィヤル火山は、6000年以上の間、火山活動を休止していました。2021年3月、4万回以上の小さな地震があった後、火山の火口が開き、噴火を始め、何千年も休止していた火山活動を再開しました。
Ottavioは、そのニュースを耳にした瞬間、そこに行こうと思い立ちました。というのも、それが、レイキャネス半島での、約800年ぶりの火山噴火だったためです。アイスランドの首都レイキャビクは、火山からわずか40 kmのところに位置しているため、噴火を間近で見ることができる千載一遇のチャンスとなりました。
アイスランドは、火山に対して比較的緩い安全対策方針を採用しており、観光客は安全な距離を保ちながら火山の様子を直に見ることができます。しかし、それでも現地の警察からの情報を常に確認する必要があり、火山からの有毒ガスを吸わないように、センサーやマスクを持っていくことが推奨されます。
Ottavio Giannella
X1D II 50C + XCD 135 + X コンバーター 1,7
火山は、被写体として特殊なものです。フォトグラファーは、勢いを増す火山活動の特長、特に、噴火のタイミングやその勢いを理解し、それに合わせてシャッターを押す必要があります。
「火山活動があまり激しくなく、比較的穏やかなときは、遅いシャッター速度で撮影します。一方、噴火の瞬間を捉える時などは、速いシャッター速度で、絞りをかなり小さくして撮影すると、映像に奥行きが生まれ、また細部まで鮮明に捉えることができます。」
Ottavio Giannella
X1D II 50C + XCD 135
熱い溶岩が地下から上がって来ると、温度は数千度にまで達します。明るく光る溶岩はインパクトがあり、カメラの被写体として最適です。しかし、このような風景を撮影する時は、露出調整が非常に難しくなってきます。
「噴火の瞬間には、とても暗い地面を背景に、溶岩が一瞬だけ非常に明るく光ります。このように、一瞬で姿を変えてしまう被写体を細部まで鮮明に捉えるためには、的確な測光調整をしておかなければなりません。」
Ottavio Giannella
X1D II 50C + XCD 135
Ottavio Giannella
X1D II 50C + XCD 135 + X コンバーター 1,7
Ottavio Giannella
X1D II 50C + XCD 135 + X コンバーター 1,7
Ottavioは準備を万全に整えていました。彼は、X1D II 50Cカメラに加え、パノラマ撮影やミディアムショット用のHCD 24広角レンズとHC50 II標準レンズ、クローズアップ撮影用のXCD 135望遠レンズの3枚のレンズを撮影で使用しました。ダイナミックで高コントラストの風景を撮影する代わりに、Ottavioは大胆な決断をしました。「HDR機能を使わずに、写真1枚で勝負しようと決めました。飛び散る溶岩のリアルな動きを永遠に残したかったのです。」
Ottavio Giannella
「私は当時、もう一台、別のカメラも持っていましたが、ハッセルブラッド カメラの方が素晴らしい映像を捉えることができました。撮影した写真の後編集作業は、とてもシンプルでした。主に、シャドウ部分など、暗部の調整に集中しました。X1D II 50Cのダイナミックレンジや、ほぼノイズがない状態でのシャドウ部のリカバリーによって、どのショットも予想以上の出来に仕上がりました。このカメラは、あの撮影に必要不可欠なカメラだったと言っても過言ではありません。」
火山のあらゆる動向を観察するために、Ottavioは、日の出から日暮れまで現場に留まりました。午後11時、まるで火山が空に明かりを灯したかのように、空が明るくなり始めました。一組のカップルが隣合わせに座って、一生に一度しか見られない風景を眺めていました。Ottavioはこのシーンに気がつき、X1D II 50Cで撮影しました。「あの景色は、とてもロマンチックでした。あの美しいシーンを自分の手で撮影したいと思いました。現実とは思えないほど美しく、まるで暖炉の前で暖まる恋人達を眺めているようでした。
Ottavio Giannella
X1D II 50C + XH コンバーター 0,8 + HCD 24
午前4時、アイスランドの空が再び明るくなりました。火山活動は一晩中続き、日暮れからわずかしか経っていないにも関わらず、丘の向こうから太陽が昇り始めました。一見すると、もう一つの火山の火口が開き始めたのかと見間違えてしまうような光景でした。
Ottavio Giannella
X1D II 50C + XH コンバーター 0,8 + HCD 24
ファグラダルスフィヤル火山の火山活動は、2021年9月下旬に停止するまで6ヶ月間続いていました。吹き上がる火山ガスとともに、広範囲に溶岩が地表に広がり、その光景は、荘厳かつ驚きに満ちており、なぜか目が離せなくなるほど地球の内なる生命力に深く惹きつけられます。
「柱の形状で固まった溶岩は、最大300 mの高さにまでなり、非常に高温です。そのため、私は風向きが変わっていないことを確認しなければなりませんでした。万が一風向きが自分の方を向いたら、私はすぐにそのエリアから離れないと、燃え盛る噴石が飛んできてしまいます。」
「本当に素晴らしい経験でした。私達の住む惑星を形成する岩の形が、どのように出来上がったのかを深く理解できる、良い機会でした。まるで、何百万年も時をさかのぼって、人智を超えた自然の驚異的な方法で、万物が形成されていく様子を見ているような経験でした。」
Ottavio Giannellaについて
イタリアをベースに活躍するOttavio Giannellaは、世界中を旅しながら、世界のユニークな現象や視点をカメラに収めています。彼の作品は20以上の国々で撮影され、北極で長期間に渡り、オーロラの撮影をしたこともあります。彼の作品は、National GeographicやThe Post Internazionale等の出版物に取り上げられました。