オーストラリアの写真家、ヒース・ホールデンは2022年 FIFAワールドカップの準備段階を公式に記録する仕事を得たことを契機にカタールのドーハに移住しました。ストリートフォトの目線で新たな住処を見つめたことにより、彼はこの町のより古くて伝統的な側面と出会います。大がかりな建築現場が至るところに点在する中、彼は小さいな商店や狭い路地裏が消えてしまうのも時間の問題であることを悟ります。

なぜドーハで暮らすことになったのですか?

この人生の章はゆっくりと熟成されて至ったものです - タスマニアで暮らしていた頃、新鮮な環境に囲まれて今後の活動の方向やモチベーションをより深く探らなければならないところまできていました。ある土曜日の朝、友人がカタールで新たに始まるプロジェクトの求人を送ってくれました。内容についてよくは知らなかったので数時間かけて検討した結果、好奇心からまずメールを送ってみることにしました。ひと月しない内に、全ての準備は整い、その町を出ていました。仕事の内容は2022 FIFAワールドカップの準備と周辺のプロセスを記録することでした。

「消えゆくドーハ」のシリーズについて教えてください

「消えゆくドーハ」はいつも通りのストリートフォトを探求していたところ、ドーハのより古くて伝統的な地区に至ったことから始まったシリーズです。街全体が建設現場に覆われていたのでこういった景色が失われてしまうのも時間の問題であることは感じ取れました。これらの地区をよりに彷徨っていると、黄昏が訪れて人工光が灯ると表情が分かることに気づきました。これこそが普段のストリートフォトとは違う味付けをこのシリーズに与えるものでした。黄昏が訪れるブルーアワーに商店や狭い路地が活気づく瞬間を捉えるのはとても楽しいものでした。簡単に言えば、これはこの古いドーハと、この消えゆく界隈を我が家と呼ぶ人たちの物語なのです。

撮影にX1D II 50Cを選ばれたのはなぜですか?

X1D IIのことは以前から憧れてはいましたが、このシリーズの構成とスタイルを考え始めた時に、中判のフォーマットとそれがいかに低照度の環境の画に影響を与えるかさらに興味を持つようになりました。サイズはとても魅力的でした- この数年間より小型のミラーレスやレンジファインダーは使用していたので、大きな一眼レフとそのレンズを使用するのは厄介でやる気を削ぐことでした。X1D IIは私の作品に最適に思えたのです。

X1D IIは実際どのように役立ちましたか?

多くの撮影は黄昏から夕方遅い時間まで様々な人工照明のもとで行われましたため、低照度における撮影能力と色再現性はこのドキュメンタリーにおいて肝心でした。ミニマルなデザインも特筆するべきだと思います。撮影している時はシャッター速度、絞りとISO以外は何も気にしないので、過剰なボタンやダイヤルなどに気を散らされずにいつでも準備万端でいられました。

このシリーズでXCD45Pレンズを使用していかがでしたか?

このレンズの換算焦点距離の35mm相当という画角は私にとって魅力的でした。ずっと28mmと35mmのレンズを使用していたので、街の景色と人々を写すには万能なレンズとなることは分かっていました。このレンズはコンパクトな上にレンズシャッターの音はとても静かで、不必要な注目を集めません。オートフォーカスも十分良いですが、個人的にはマニュアルフォーカスのリングの感触と正確性も好みです。付け加えると、フラッシュは私にとって使いたい作品が多い存在なのでレンズシャッターによって1/2000秒もの同調が可能というのは今後のシリーズでぜひ試したいことです。

被写体は撮影されることにどのような反応でしたか?

話題は撮られる人それぞれによって異なりますし、本当に意図を伝えるためには通訳が必要なこともあります。概して人々は機材や手法、なぜ私がここを撮影場所に選んだかに興味を持っていました。よく聞かれたのは「(そのカメラは)いくらするんだ?」でした。人々はみんな物の価値を知りたがるものです。画面に撮った写真を写して見せるといつも笑顔が生まれました。スマートフォンを持っていればその場で送ってあげていました。

X1D II 50Cから生まれた画像についてどのように感じましたか?

X1D IIの画像は素晴らしいものでした。ナチュラルカラーソリューションは非常に正確なトーンと自然そのものの色彩を与え、色合いがまるでサーカスのシーンのように誇張されることはありません。元々ポスト処理で大きく手を加えることはしませんが、それでも16bitの深度と14段のダイナミックレンジは間違いなく私を手助けしてくれました。レベル補正、トーンカーブに加え、ほんの少しブラシを使った選択補正でシャドーのディテールを低照度のシーンから引き出しながらも、おかしな眩しい光を抑え、そして全体的な画質を落とすことはないのです。高ISOにおける結果もとても美しく、多少のノイズもクラシカルな粒子感のような印象で、いかにもデジタルノイズが出ているようには見えないものでした。

ヒース・ホールデンについて

2007年にタスマニア北東部で地元の新聞社で写真のキャリアを始めたヒース・ホールデンは、そのエディトリアルの背景によって人々を写しながらそのストーリーを伝える手法を身につけました。後に2008年にはシンガポール動物園で写真のスタッフとして社内の広告や教育、アーカイブのための撮影をこなしながら、動物学に関する記録も担当しました。その後6年に渡るタスマニアデビルに関する自然史のプロジェクトに参加しながら、フリーランスとしてGetty Imagesやその他の機関のため撮影を行っていました。現在、彼は2022 FIFAワールドカップの公式ドキュメンタリーのためドーハで活動しています。彼の他の作品はこちらから。

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