ジュリア・フラトン=バッテン

捻じれの美学

若い女性曲芸師の一座の驚嘆すべき体力と柔軟性に魅了され、ハッセルブラッド アンバサダーのジュリア・フラトン=バッテンは彼女たちが思いもよらない場所で技を行うところを素晴らしい写真に収めました。彼女の作風の特徴であるシネマティックなライティングとイギリス中から見つけた見栄えの良い部屋を組み合わせたジュリアの作品は、世界最古の身体芸術のひとつを新たな視点から捉えます。

この曲芸一座とどのように出会ったのか教えてください。

彼女たちは年齢が12歳から16歳の少女たちです。彼女たちの多くとは、ゲーム・オブ・スローンズや私のショートフィルム作品にも出演していた彼女たちのコーチ、ピクシー・ルノットを通じて知り合いました。彼女たちの中にはもともと新体操のトレーニングを通じて自分の柔軟性に気づき、曲芸を真剣に始めた者もいます。彼女たちのことはずっとインスタグラムでチェックして、イベントへの参加などを見守っていました。彼女たちは素晴らしい、お互いとの結びつきが強い、明るい少女たちです。

このような撮影において、どのように若い被写体を居心地よく保ちましたか。

彼女たちのほとんどはステージの上でのパフォーマンスに慣れていました。全てのアスリートと同じように、実力を発揮するためには撮影の事前にしっかりウォームアップや準備運動をすることが必要です。彼女たちが納得できるまで準備の時間を与えるよう気を付けました。さらに撮影は交代で行いました。一人が疲れたら、休憩してもらってもう一人の撮影を進める、という具合です。彼女たちのポーズを取るには肉体的な消耗が大きく、特に後ろに大きく反り返るには脊柱を守るために多くの筋肉が働きます。彼女たちはパフォーマンスをする日にはほんのちょっとしか食事をとらないことに納得しました。

彼女たちを撮影した様々なロケーションについて教えてください。

撮影場所のひとつ、オックスフォードシャーにある旧キャメル・カレッジは、ヨーロッパで唯一のユダヤ人のための寄宿学校でした。1948年から1998年にかけて、当初はユダヤ人の男子に、1986年からは女子にも一級の教育を施してきました。ここはイギリスで最も学費の高い寄宿学校にもしばしばなっていました。1970年には教育レベルの高さと独自の文化から「ユダヤのイートン校」と呼ばれるようになりました。1997年に財政上の理由で閉校となり、建物のほとんどは放置されました。私は個々の様々なユニークな部屋に魅了されていましたが、新型コロナの影響で実際に撮影ができるまで数か月待たないといけませんでした。

二番目に撮影を行ったのは東ロンドンにある会員限定でストリップショーなどの催しが行われる4階建てのジョージ王朝風の邸宅です。本棚に隠されたドアからはエキゾチックでデカダン風の部屋へと繋がります。まるで洗練された雰囲気の中に気まぐれさも感じさせるバズ・ラーマン映画のセットに迷い込んだかのようです。コロナの影響で営業を数か月もやめていましたが、特別に撮影許可を得ることができました。

最後の場所は70年代のSF映画に影響を受けた建築家アダム・リチャーズの設計による住宅です。奥まった丘に位置するこの建物は、ローマン風のヴィラの遺跡に見られるような伝統的なレンガ造りを取り入れ、タルコフスキーの1979年の作品「ストーカー」のようなコンクリートの部屋を取り入れています。このモダンな邸宅は農家の跡地に作られ、一般に想像されるロンドン郊外の建築からはかけ離れています。私は許可を得て住人の所有物をどかし、ブルータリズム風のギャラリーへと姿を変えさせました。

これらのイメージを実らせるために、もっとも大事にしたことは何ですか。

私のファインアートの作品の大多数において、建築的な環境が重要となります。なるべく部屋から要素を取り除き、その後自分が伝えたいストーリーの一部となるようプロップを配置し直します。このセッティングにはほんの微妙なニュアンスが必要です、例えば箱から床にこぼれるコーンフレーク、ジムの更衣室に吊り上げられたボクシンググローブ、床に立てられた扇風機、香水の瓶を持った少女、などです。私は特定の話のためのシナリオを夢想し、そこからな時間もかけて小道具屋を回って理想のプロップを見つけ出します。これにおいては自分に妥協を許しません。

少女たちの衣装はどのように選びましたか。

彼女たちの衣装を選ぶのは困難な作業でした。なぜならば簡単に曲がる造りでありながら、着る者の身体の造形を隠してはいけないからです。さもないと捻じれ曲がった人間の造形が見る者に伝わりません。去年の夏、試着の日には私の東ロンドンの家の庭で実際に様々なポーズを試しました。とても楽しい一日で、彼女たちもはしゃいでいました。

H6D-100cはこの撮影にどのような利点をもたらしましたか?

レンズや外部アクセサリーとの組み合わせで、H6D-100cは理想的な使い勝手の良さと比類のない画像のクオリティを実現してくれます。特に画像のクオリティは、1メートル以上の大きなプリントを制作することも多い私にとっては必要不可欠です。H6D-100cで撮影するのが大好きになりました。

ジュリア・フラトン=バッテンについて

ハッセルブラッド アンバサダーであるジュリア・フルトン=バッテンは、世界中で知られ、作品を展示してきたファインアートの作家です。彼女の特別な場所とシネマティックなライティングなど高度にクリエイティブなセッティングを組み合わせる技法は彼女が確立したスタイルとして知られています。彼女は視覚的な緊張感を仄めかし、ミステリーのヒントを想起させることにより、鑑賞者が再度注意深く写真を探るように仕向けます。彼女は多数のコマーシャルとファインアートの賞を受賞し2008年にはハッセルブラッド マスターに選ばれました。彼女についてより詳しい情報はこちら、またはインスタグラム@julia_fullertonbattenから。

CAPTURE THE TRUEST COLOURS

WITH THE H6D-100C

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