SVEN BAUM

XVアダプターで、生まれたばかりの娘の日常をシネマチックに記録

独学のフォトジャーナリストのスヴェン・バウムは、ほぼ1年間にわたって彼の最初の娘のロミーの日常を記録しました。ポーズをとった硬い表情の赤ちゃんのポートレートから一線を画し、スヴェンはX1DといくつかのXCDレンズ、そしてXVアダプターと昔のカール・ツァイス・プラナー 80mmレンズ、ディスタゴン50mmレンズ、21mmエクステンション・チューブを接続して、映画のようなカットでカラーグレーディングした写真を撮影し、娘の飾り気のない日々の成長のストーリーを紡ぎました。

このプロジェクトの制作のきっかけは何ですか?

このプロジェクトは、自分自身の為だけに制作した珍しい作品の1つです。自分が父親になるとわかって以来、娘の思い出を私たち夫婦のみならず、娘も含めた家族全員のためにどのように残していくか?を考えました。もちろん、彼女本人の記憶を尊重しながら、そのために私ができることは何かを自問しました。妻と私がすぐさま思ったことは、娘に猫の耳をつけ、バスケットに入れて、ポーズを取らせたフラッシュ写真は撮影したくないということでした。なので、私たちは娘の成長をできるだけ素朴に撮影することにし、それが日常を記録する最適な手法だと私は思うのです。私の周囲の非常に才能のある動画の世界の撮影監督から多くのインスピレーションを得たので、私は写真と動画の2つの世界を融合させて実写の一コマ動画、または動画のスチール撮影を試みました。その結果、写真と同じスタイルで制作した10分の短編映画が出来ました。この映画は、毎年ロミーの誕生日に自作のファインアートプリントの本と一緒にプレゼントする予定です。このプロジェクトは、思い出を残すことが全てなのです。

自身の映画制作の経験や映画への関心が、どのようにこのプロジェクトに影響していますか?

このプロジェクトは、特殊効果や特定の俳優が登場する映画そのものではなく、むしろ私たち全員の愛してやまないストーリーがぎっしり詰まったものである可能性が高いと思います。確かに私たち全員がお気に入りの映画を持っています。それぞれの心や個性を形作った、古典またはインデペンデントな映画です。しかし、私は個人的に知っている人々に、より感銘を受けており、シュトゥットガルトには才能のある撮影監督やストーリーテラーが大勢います。なので、私は多くの映画を分析して研究しましたー映画がどのように作られ、組み立てられるのか?、また映画と呼ばれるこの神秘的な世界について、他の専門家と良い議論をしました。

私たちは全員「人生」と呼ばれる自分の映画のアーティストです。そして今、私はロミーについての自分のヴィジュアル的な物語を伝える機会を持つことができました。もちろん、彼女の人生が何をもたらすか誰も知りません。私は彼女が喜びと愛に満ちた幸せな人生を送ってくれることを願っており、彼女が最高のチャンスを得られるよう、私たちができる最大限のことをするつもりです。彼女は自分を毎日より良い人にしてくれ、自分とその才能を最大限に生かすことを可能とし、さらに子どもの頃の自分へ戻る機会も与えてくれます。学びを止めないよう、心を開いて、何か新しいものを作ることへの情熱を絶やさないことを、このプロジェクトを通じて得ることができました。この撮影で、絶えず自分自身を進化させ、自身のスキルをどんどん向上させて、印刷やグラフィックデザイン、さらにはカッティングやウクレレによるオリジナル・サウンドトラックの作成など、年々新しいことを学ぶことができます。

X1Dはどのようにご自身の作品イメージの実現に貢献しましたか?

その並外れた解像度や、細部を失うことなくトリミングできる点、そして色と色調を絞ることができる広いダイナミックレンジの恩恵にもちろんあずかることができました。しかし、私がXシステムで最も気に入っている点の1つは、並外れたレンズ、つまりレンズシャッター付いた軽量のレンズです。そして最も重要なのは、特徴的なボケです! 現在、多くの企業がシャープなレンズを製造できますが、ハッセルブラッドレンズのような趣のあるシャープなレンズはほとんど製造できません。シャープな部分とシャープでない部分を最適に分離できる、このような素晴らしい映画のような見た目を表現できることは、私にとって非常に重要なモジュールです。私はレンダリングとそれらがイメージに与える趣を本当に愛しています。また被写体との距離が近い、親密なプロジェクトには、小さなカメラをいつでも手元に置いて置けることは大きなアドバンテージです。

XVアダプターをどのように使いましたか?、またプロジェクトにそれは何をもたらしましたか?

XVアダプターは、(XCD 45mmおよび90mmレンズに加えて)500 C / Mから既に持っていた2つの焦点距離のレンズ(カール・ツァイス・プラナー 80mmレンズ、ディスタゴン50mmレンズ)を使用できるため、私にとって贈り物でした。本当のクローズアップショットや詳細を撮影する際に、XVアダプター、21mmエクステンション・チューブ、内部電子シャッターを大きく開いたプラナーまたはディスタゴン・レンズを使用します。プラトンやルベツキのような広角レンズと被写体と非常に近いスタイルが好みです。生まれたばかりの赤ちゃんは非常に脆く、繊細で、急速に成長し変化してしまうので、詳細を撮影することは私と物語にとって非常に重要です。人間の体は疑問の余地なく、完璧な不思議であり、成長に合わせて、詳しく観察することは意味のあることです。

どのように映画のような写真を撮影しましたか?

写真のほとんどは、広いアスペクト比のものです。残りは、カラーグレーディングとレンズの選択の組み合わせです。私は16:9からプロジェクトを開始し、19:9に、次に21:9に移行し、そしてここ数か月間はXPan比率の65mm x 24mmで撮影しています。XPanフォーマットの全身ポートレイトモードでさえ、ちょっとした工夫でとても美しく見えます。また、その環境下で限られた光源のみを使用して撮影することと、ハイライトを保存できるように一段階、またはそれ以上のアンダーな露出も非常に重要です。撮影中にそれができない場合は、撮影後の編集で行います。私は少し不精なフォトグラファーでもあるので、5分の撮影のために3時間かけてセットアップしたり、また機材を梱包して、50 m離れてまた同じセットアップをさらに3時間かけて作りたくありませんでした。私は物事を真実かつリアルに保って、シーンをあるがままに撮りたいのです。しかし、もちろん、写真をより素晴らしくするために、明るい窓や、窓から跳ね返る日光、またはブラインドからの自然な影に常に注意を払っています。カラーグレーディングは、カーブを少し強調するだけでなく、イメージを操作して、私が望む映画のシーンに近づけることができる唯一の方法です。

スヴェン・バウムについて

独学でフリーランスのドイツ人フォトジャーナリストのスヴェン・バウムは、20代前半に最初のハッセルブラッド500C / Mを購入し、スケートボードの写真撮影からキャリアをスタートしました。その間、彼はネガを現像処理し、暗室で白黒フィルムを使ってシルバープリントを行う技術を習得しました。「35ミリ、中判、4x5インチのフォーマットの白黒フィルムで、5〜6年間撮影し続けました。白黒フィルムに飽きて嫌になり、カラー写真とカラー理論を再発見するまで。それは、まるで何年も色彩異常だったような感じで、誰かが色を見る力を人生で初めて与えてくれたようでした。」とスヴェンは話します。彼の作品の詳細はこちらでご覧になるか、@stolenm0mentsをフォローしてください。

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