KEN KARAGOZIAN

ロスアンゼルス メトロの30年

一回きりのフォトセッションのため503CXを手に地下に潜ったことをきっかけにして、ケン・カーゴシアンはロスアンゼルス地下鉄の誕生からの30年を記録し続けることになりました。1000本以上のネガからセレクトされた作品「Deep Connections」は、建設機械と労働者を鮮やかに捉え、地下鉄建設の重労働を描き出します。

Tunnel Below Hollywood Boulevard, 1995

1日が30年間へ

1985年、ロスアンゼルス メトロの建設はロスアンゼルス群交通局と南カルフォルニア高速輸送管区の監督のもと開始されました。カーゴシアンは当時参加していたワークショップの次のプロジェクトとして、この様子を被写体にすることにしました。彼はロスアンゼルスの鉄道当局に手紙を書き、一日だけの撮影許可を求めました。これが30年続くプロジェクトのきっかけになりました。何時間も地下の現場で過ごすうちに、カーゴシアンは労働者たちとの関係を築くため彼らを写したポートレートを贈るようになりました。「そこで働く人々は私が撮影する姿を楽しんでくれてましたし、私が贈ったプリントを家族や友人にも見せて大切にしてくれていました。ちょうど数日前にも昔贈ったプリントを家の壁に飾っている様子をメールしてくれた人もいました。」とカーゴシアンは語ります。現在に至るまで、彼が撮り続けた人々は現場に立ち続けているだけでなく、中には彼らの息子や娘もその跡を継いでいます。

Troy, a miner, 1996
Alicia, Carpenter apprentice, 2019

「実際に現場に立つまで、その日何を撮ることになるかはわかりません。私は全ての工事現場を月に2回は訪れるようにしています。地下の変化は常に進行しています。トンネルの中のライティングは非常にドラマチックなだけでなく、時には地上から差す太陽光を得られることもあります。」

建設作業の新たな理解

繰り返し現場を訪れるうちに、カーゴシアンはロスアンゼルスの地下の世界のベテラン達の中に加わり、最前列でその卓越した高度な技術と毎日の過酷さの内情を観察できるようになりました。彼は安全のための研修にも年に何度も参加し、常に巨大な機械が蠢く周囲の環境にも注意を払っています。彼が撮影を初めてから、工事に使われる機械も進化したと言います。そして同時にカメラも進化している一方で、「私にとって選ぶカメラはいつでもハッセルブラッド503CXです。白黒フイルムに宿る美学や暗室作業を楽しんでいるのです」と彼は語ります。

さらに工事現場の非常に高い防火・安全水準の中で、バッテリーを必要としない503CXのおかげで、大げさな保護ケースに入れたりすることなくカメラを持って現場を自由に動き回れることも利点だと語ります。

Air duct on rail car, 2020
Cavern at Broadway station, 2019

「私の作品を通じて、世間の人々が地下の世界の実態、地下鉄を建設するという重労働がどんなものかを理解する手助けになることを祈っています。そして工事がすべて終わった時、このメトロに乗ってこのロスアンゼルスという多様で興味深い街を感じて欲しいです。」

Vermont/Santa Monica Station, 1995

地下を捉え続けた503CX

ケンの信頼する503CXは30年以上に渡ってこのシリーズ全ての撮影をしてきました。地下の工事現場というのは決して最も理想的なライティングとは言えませんが、彼は発煙筒を使って建設作業の重労働の細部を中判カメラで撮影することでできました。トンネルの中に迷い込む太陽光、水たまりの反射や現場に備え付けられた通路を照らす強力な照明、これらもすべて彼の光源として利用されました。503CXで得られる画像のクオリティの高さは、これらを今ロスアンゼルスのユニオン・ステーション・パッセージウェイ・ギャラリーに展示されている最大で270cmもの大伸ばしプリントにすることを可能にしました。

Jenna, Carpenter, 2018
Tony, Tunnel Equipment Operator, 1995

「私のハッセルブラッド503CXは素晴らしい写真を生み続けます。これから何年にも渡りこのカメラで撮り続けられ、暗室でプリントを生み続けられることを願っています。」

Raising Tunnel Boring Machine, 2017
Tunnel Boring Machine turning, 2016
Miners and Tunnel Boring Machine, 2017

ケン・カーゴシアンについて

カルフォルニア出身のケン・カーゴシアンは写真を学んでいた70年代、高校生の頃にアンセル・アダムズ本人のスタジオを訪れ、写真について語るという機会を得ました。卒業後も白黒写真によるファインアート作品の制作を続けるためオーウェンスバレー ワークショップの一員となり、アンセル・アダムズのアシスタントだったジョン・セクストンを含む講師達から、様々ライティング環境を改めて見つめなおし、被写体により身近になる目的で、自分の生活圏を被写体にするプロジェクト、という課題を与えられました。このうちの一つがロスアンゼルス メトロの撮影へと繋がりました。カーゴシアンの写真はLIFE誌やロスアンゼルス・タイムズにも掲載されました。彼の他の作品はこちらから。

Deep Connectionsは現在ロスアンゼルスのユニオン・ステーション・パッセージ・ギャラリーで2021年夏まで展示されています。デジタル・ギャラリーもこちらからご覧いただけます。

ハッセルブラッド歴代のVシステムカメラをもっと見る

More Hasselblad stories

All stories

Ottavio Giannella

眠りから覚醒する、大地の生命力を捉える

フォトグラファーOttavio Giannellaは、X1D II 50Cを持って、イタリアからドイツのフランクフルトへ移動した後、アイスランドのケプラヴィーク空港へ飛びました。40分かけて車でレイキャネス半島にある丘まで行き、2時間かけて徒歩で、目的地であるファグラダルスフィヤル火山まで向かいました。

Dayanita Singh

本、箱、美術館 - 様々なカタチで再構築される展示

10月15日、ハッセルブラッド財団が主催する2022年ハッセルブラッド国際写真賞が写真家ダヤニータ・シン(Dayanita Singh)に授与されました。写真界の「ノーベル賞」と称されるこのハッセルブラッド国際写真賞は、アーティストの写真芸術における先駆的な功績と、その芸術作品が次世代のフォトグラファーにもたらした影響について称える賞です。

Ali Rajabi

X2Dで、ニューヨークの一瞬を捉える

写真の歴史を築いてきたと言っても過言ではないハッセルブラッドは、アマチュアでも、写真を趣味としている人でも、プロでも、誰でも知っているブランドです。私にとって、ハッセルブラッドカメラは、キャリアアップするための自分への投資とも言えます。卓越した写真を撮影するためには、適切な瞬間に適切なツールを使うことが、どんなときも大切ですから。

Hans Strand

1億画素センサーで捉えるアイスランドの情景

バイオリニストにとってのストラディバリウスと同じで 二つとない最高のカメラです。

Flora Borsi

X2Dが描き出す、幻想的なリアリズム

X2Dは、画家のために設計されたカメラのようなものです。このカメラで撮影した写真は、まるで技法を凝らせて描きあげた絵画のような味わいを持っています。あまりにも完璧すぎる故に、それが写真なのか絵なのか見分けるのが難しいときもあるほどです。このカメラは、捉えられる視覚情報を全て捉えて再現してくれるため、私が伝えたいストーリーを残さず伝えてくれます。

Heath Holden

Disappearing Doha

Discovering his new home of Doha, Qatar through the lens of street photography, Heath Holden explored the older and more traditional neighborhoods of the historical city.