Hasselblad Masters

Volume 7: Enlighten

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「この鮮やかな色彩には、追悼の意の他にも、様々な意味が込められています。ここにはもういないけれども、その人が存在していたこと、そして、その人が与えてくれたものによって、私達の人生が豊かになっている ― そのことを、生と死が入り交じるユニークな表現で称えています。」

Enlightenシリーズの撮影のため、Paul Fuentesは、メキシコのオアハカ州に向けて出発しました。オアハカ州は、メキシコ南西部の活気ある州で、伝統行事「死者の日 (Día de los Muertos)」が行われることで有名です。故人への追悼の意を示すこの象徴的な行事に、人々は様々な想いを持って参加します。「Enlightenシリーズのテーマをもとに、私は、より深みのある表現で光を捉えつつ、同時に、メキシコ出身の自分のルーツを称えたいと考えていました。」

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「死者の日」に関連する伝統行事では、様々なアイテムが重要な役割を果たします。プロダクト フォトグラファーであるPaulにとって、この行事は、撮影に最適でした。オフレンダ (Ofrenda)として知られる特別な祭壇は、家族によって丁寧に飾り付けられます。故人との美しい思い出を讃え、キャンドルや写真、思い出の品に加え、食べ物や飲み物、音楽など、故人が好んでいたものを祭壇に供えます。「このようなアイテムは、自分の存在の意義や目的を再認識させてくれるだけではなく、大切な思い出を新たに作るきっかけにもなります。このような行事での出来事が、いつか大切な思い出となり、将来、一人ひとりのオフレンダの一部となっていくことでしょう。」

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オフレンダに飾られるアイテムは、故人への想いを表しているだけではなく、様々な文化的な意味合いも含んでいます。花は命とその儚さを象徴し、頭蓋骨は死を連想させるものとして考えられています。ライトやキャンドルは、故人との時間や思い出、そして故人の歩んできた人生を表します。しかし、このようなアイテムが表現する追悼の気持ちや文化的な意味合いとは反対に、プロダクト フォトグラファーとして、このアイテムを撮影するという行為は、とても技術的なプロセスです。Paulは、照明、色合い、構図、編集、全てを考慮に入れながら作品を作成します。

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照明

Paulは、コラージュという表現技法と適切な照明を使い、彼独自の明るい雰囲気のスタイルで、対象物をハイライトします。「このシリーズでは、柔らかい光と硬い光の照明を組み合わせ、非現実的で、まるで夢のような雰囲気の映像を撮影したいと思っていました。私は、異なる露出の写真を複数合成して、ユニークな視覚効果を持った作品を作成することが多いと思います。」

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色彩

明るく鮮やかな色合いのものに溢れたこの伝統行事を、Paul特有のポップな色調を使って撮影する場合、被写体の生き生きした様子を捉えることが鍵となります。彼は、その生き生きとした見た目と全体的なバランスが完璧な状態になるまで、照明と色合いを調整し続けます。「コントラストが鍵ですね。このカメラで撮影すると、シャドーやハイライト、そして色を調整する余裕が十分にある映像を撮影できるので、最終的に、全体が鮮やかに明るい作品に出来上がります。」

「この伝統行事を通して、私達は、死に対する恐怖が少なくなり、人生を最大限に楽しむことができます。」

構図

Paulの作品では、構図のバランスもまた、細部まで考えられて設定されており、これはとてもクリエイティブな作業でもあります。彼は、アイテムと、そのアイテムの色や質感、そしてサイズのバランスを考えながら構図を考えます。視覚的に魅力的な写真作品を作成すること、そして、自分が見てほしいアイテムとその特徴に作品を見る人々が注目してくれること、これがPaulにとって、とても重要な点です。「私は、魅力的なストーリー性を持ちながら、人の興味を掻き立てて、かつ、理解しやすいビジュアルを常に探し求めています。構図を調整する時は、異なる要素のものを完璧なバランスで配置することに集中します。最低限のものだけを残し、作品のメッセージに必要のないものは全て取り除くようにしています。」

編集

最終的な編集工程については、彼はこのように述べています。「どんな作品でも、できるだけ高い解像度で撮影し、編集したとしても、細部まで鮮明かつ高品質な映像を維持できるようにしています。高い解像度で撮影すると、後編集時に、創造性を大いに発揮することができます。」

様々な要素のバランスを取る中で、Paulにとって、撮影の鍵となるのは、創造性と想像力です。彼は、見る人の心を揺さぶり、人々の記憶に残るような写真を生み出すために、これらの要素が必要不可欠だと考えています。「創造性を発揮するには、忍耐が必要です。新しいアイデアが生まれて、実際に試してみるまでには、時間がかかるものです。また、人々を驚かすような作品や、前例のない映像作品を生み出すためには、様々なコンセプトを試したり、混ぜ合わせたりしてみる想像力も必要です。」

「製品写真の撮影には、技術的なノウハウとストーリー性の両方が必要です。良い製品写真は、適切な照明、構図、編集を施せばできるというわけではありません。それは、ブランドの価値やその世界観を再現しつつ、ちょっとした工夫やユーモアを付け加えるフォトグラファー自身のストーリーテリングの能力とも関係があるのです。私は、撮影技術に加え、ストーリーテリングの能力、この2つの要素を常に意識しながら、見る人々の心を掴む創造性に富んだ作品を作ろうと心がけています。」

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Paul Fuentes

Paul Fuentesについて

ロンドンを拠点に活躍するハッセルブラッド マスターPaul Fuentesは、メキシコシティで生まれました。彼の作品は、明るい雰囲気と色彩をベースに、アイテムや動物、様々な質感のものを組み合わせたコラージュ表現を使って、身近なアイテムを、新しい文脈または観点で再現します。インディペンデント フォトグラファー (The Independent Photographer)による新人賞 (Emerging Talent Award)を受賞し、ソニー ワールド フォトグラフィー アワード (Sony World Photography Awards)のスチルライフ カテゴリーにノミネートされた経験があります。

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