Hasselblad Masters

Volume 7: Enlighten

Marek Würfl, X2D 100C, XCD 1,9/80

独特な雰囲気を持ち、ノスタルジックな感情を引き起こさせるMarek Würflのポートレート写真は、忘れかけていた子供の頃の思い出や感情を思い起こさせてくれます。Marekにとって、自伝的な要素も一部あるこのシリーズは、子供の頃の友達や時間、夢などを作品で表現しています。パーソナルな視点で制作されたシリーズであるにも関わらず、このシリーズは、見る人々に語りかけ、彼らに自分自身の子供時代を思い起こさせます。

「子供の頃、私達の心の中に、映画や本に出てくる登場人物のようなヒーローがいたと思います。そして、このヒーロー達が、自分自身の人格形成や創造力や想像力に影響を与え、今の自分が形成されているのです。」

Marek Würfl, X2D 100C, XCD 1,9/80

しかし、Marekの子供時代のヒーローは本の中の登場人物だけではありません。彼の子供の頃、Marekの父親は、軍事訓練に参加するため、長期間不在になったことがありました。「父親がすごく恋しかったです。彼が家に帰ってくると、写真に写っているのと同じミリタリーキャップをかぶっていました。このことは、とても鮮明に覚えています。もしかしたら、他の誰かも、同じように、父親の帽子をかぶった記憶があるかもしれません。」

Marek Würfl, X2D 100C, XCD 1,9/80

Marekは、子供の頃の記憶を、写真に反映させるだけではなく、このシリーズの被写体を選ぶ時にもその記憶を反映させました。Marekは、被写体の個性を強調した作品を撮るつもりで撮影しますが、偶然にも、彼が写真で作り上げようと思っているキャラクターと、そのモデルとなる子供自身の個性が似ていることがよくありました。「モデルを選出中、Šimonを初めて見た瞬間、私は『彼は、紙でできた帽子をかぶるか、紙でできた何かを持っているシーンが合うだろう』と思いました。しかし、一体どんな映像ができるのか、はっきりとしたイメージは持っていませんでした。」 その後、MarekがŠimonの両親と話をすると、驚くことに、Šimonが一番好きなことは、折り紙だったということが分かりました。「あの時のことは、すごく強く記憶に残っています。あまりにも偶然すぎて、まるで運命かのように感じました。このことで、モデルとしてŠimonとポートレート写真の登場人物としてのŠimonのつながりに深みが生まれたと思います。」

Marek Würfl, X2D 100C, XCD 1,9/80
Marek Würfl, X2D 100C, XCD 1,9/80

幼い頃から、Marekは、アートが好きでした。ルネッサンス美術からポップ シュルレアリスムの幅広い分野から影響を受けてきました。彼は、自分自身のスタイルをマジカル リアリズムというカテゴリーに当てはめています。「ポートレート写真は、モデルを捉えた写真である以上に、あるキャラクターと彼・彼女が持つ独自の世界観を写し出しすように撮影されたものです。」   Marekが作り出す独特な雰囲気の中では、あらゆる要素が存在しなくなります。彼は、撮影する写真に合わせて、ストロボや自然光を使用しますが、たとえ自然光を使ったとしても、彼の撮る写真の中には、場所や時期、時間の文脈が存在しなくなります。被写体はまるで何もない空間にいるかのように見えます。このような概念が不在であることで、Marekの作品を見る人々は、自分の過去や感情、思い出で、その空間を埋めることができるのです。

Marek Würfl, X2D 100C, XCD 1,9/80

Marekは、作品で使用するカラーにおいて、シンプルでありつつも、ダイナミックな色合いの映像を撮影します。彼は、リプロダクション ローゲインで撮影し、画像のトーンカーブを調整します。「このカメラを使うと、スキントーンの柔らかさや階調まで捉えることができ、まるで夢を見ているような、ノスタルジックで、絵画のような雰囲気が映像に凝縮され、表現されます。」 Marekの映像制作や制作工程において、スキントーンが最も重視されています。彼が他のカメラを使用した時は、完璧なトーンやコントラスト、色合いを実現するために、何時間もかけて作業していましたが、ハッセルブラッドのカメラを使用すると、はるかにシンプルな工程で作業することができました。

Marek Würfl, X2D 100C, XCD 1,9/80

「X2Dで撮影した写真を見た時の気持ちは、言葉では表現できません。泣きそうになってしまいます。写真の中の人物が少し動いて、あなたを見つめたり、まばたきをしている気がすると思います。それを見ると、他のどのカメラでも、味わったことのない独特な気持ちになります。」

Marek Würfl

Marek Würflについて

Marek Würflは、スロバキアのポートレート フォトグラファーであり、2021年のハッセルブラッド マスターの受賞者でもあります。彼は、ファインアートへの情熱を様々な形で表現し、まるで絵画のような作品を生み出します。彼は、非常にシンプルな背景と落ち着いたトーンを使い、不思議な雰囲気を持った作品と作成します。色合いや照明に対し、独特なアプローチを行い、被写体の個性を引き出します。

Inspiration in Every Detail