Hasselblad Masters

Volume 7: Enlighten

Marcus BitschのシリーズHomeは、誰もが味わったことのある経験を写し出しています。思いもしなかった突然の人生の展開、傷心、大きな環境の変化や劇的な変化により、居心地の良かった先が見えていた人生が全く違ったものになってしまう、そんな経験を。長期に渡って続いていた関係が終わり、不本意にもフランスから母国デンマークに引っ越すことになったMarcusは、カメラを使い、その旅路を撮影することにしました。「自分の人生の方向性が突然変わってしまったことに対して、自分がどのようにその変化を処理していくのか、見てみたかったんです。この変化は最良の結果をもたらすかもしれないのに、それに気が付きにくい可能性がありますから。」

MarcusのシリーズHomeでは、先が見えていたはずの人生が、そのレールから大きく外れてしまった後、彼が徐々に新たな視点に気づいていく様子が描かれています。このストーリーは、作品の撮影技法によって、うまく描き出されています。彼の生み出す芸術は、まるで夢のようです。しかし、実のところ、彼は最小限の後編集で、この奇妙だけれども面白い写真作品を作り出しています。彼は、スケール感を利用して目の錯覚、強化遠近法などを使い、現実世界と重なり合う非現実的な要素を描き出します。

HOME

Meridian
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, 2,5/55V

「宇宙船が、柔らく温かい雲を抜け、空気の薄い上空へと飛んでいく - これは、人間関係とその軌道を象徴しています。起伏の激しい飛行をする時もあれば、スムーズで楽しい飛行をするときもあります。」

Marcus Møller BitschによるMeridianメイキング映像

「Meridianは、場所や気候を考慮し、正確には3.6 kgにもなる大量の綿を使用したため、撮影が特に難しい作品でした。機材やセットが気候の影響を受けないように、防水シートでカバーしてはいましたが、風が吹けばすぐに、綿から小さな「雲」が飛んでいってしまいます。しかし、幸運にも、夕暮れ時には空が晴れ、撮影に最適な空模様になりました。」

Freefalling
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 3,5/30

「乗っていた宇宙船から、抽象の世界へ落ちていきます。彼の宇宙用ヘルメットは、不安や不確実なものから守ってくれるもの、先が見えない場所で自分を守ってくれると同時に、以前いた場所の心地良い空気を提供してくれる盾でもあります。」

Comfort in Where the Breath Is Visible
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 2,5/55V

「彼は着陸しました。落ちてきた後は、予想していたよりも落ち着いた静かな環境に一旦避難しました。不確定なことに溢れる世界で、冷たく青い海は、落ち着きと親しみやすさをもたらしてくれます。自分の呼吸が目に見てとれる冷たい海の中に、どこか心地よさがあるのです」

Clearer View
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 3,5/30

「時が過ぎ、宇宙船がはっきりと見えてきました。その宇宙船は、長距離飛行をする運命ではなかったのです。」

A Smaller Reflection
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 3,5/30

「彼は、ヘルメットが与えてくれる安心感の中に、小さな自分自身の存在に気が付きました。まるで、自分の考えに浸っているみたいに。」

The Eye of Nature
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 2,5/55V

「彼は、自分自身をはっきり見つめようと、自然の中にアイデアを探し求めます。」

The Helmet's Resting Place
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 2,5/55V

「彼は、新しい世界の空気が、吸っても大丈夫なものだと気づくと、ヘルメットを脱ぎ、置いていきます。過去の自分の跡はその場に残り、その跡は何の成長も促さないものであることを象徴しています。」

Acceptance
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 2,5/55V

「彼は、新しい世界を受け入れ、周りの環境に溶け込み始めます。」

Marcus Møller Bitschが雲を作成するメイキング映像

「『Acceptance』では、実は、雲は自分よりもカメラに近い位置にあります。私は最初、多焦点合成を使って全体的にシャープな映像にしないと、目の錯覚がうまくいかないと思っていました。しかし、X2Dは広いダイナミックレンジに対応しているため、予想していたよりも大きな絞り値で撮影でき、後編集で露出を調整し、理想的な映像に仕上げることができました。」

The Ballast of the Past's Ideals
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 3,5/30

「理想の形の宇宙船は、もう必要ありません。過去の理想に縛られずに生きるために。」

Light
Marcus Møller Bitsch, X2D 100C, XCD 3,5/30

「彼は、まるで、周りの影と一体になっているようです。空は星々や惑星でいっぱいで、そこには探検するに値する人生がもっと存在します。」

Marcus Møller Bitsch

Marcus Møller Bitschについて

「現実の中に、非現実的なビジョンを生み出したいと思っています - 刺激的で、インスピレーションに溢れ、ストーリー性のあるビジョンを。」

ハッセルブラッド マスターズの受賞者Marcus Møller Bitschは、写真を独学で学び、デンマークを拠点にするフォトグラファー兼ディレクターです。Marcusがオーストラリアから母国デンマークに戻った後に感じた疎外感にインスピレーションを受け作成したシリーズ作品『Returning Home』は、ハッセルブラッドマスターズ 2021のヘリテージ カテゴリーを受賞しました。彼は、仕事でパリに居住した後にデンマークに戻る過程を記録した『Home』を、このシリーズに追加しました。フランスに住んでいた頃、彼は、絵や小道具制作に夢中になり、ストップモーション アニメーションに興味を抱きました。Marcusは、このような情熱を、自分で小道具やセットをデザインし製作することで、自分の写真作品に反映させました。彼の作品は、様々なビジネスから注目を集め、2022年、Marcusは、プロダクションハウスEDDYのディレクターに就任しました。

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