Hasselblad Heroine

Lola Akinmade Åkerström


地図にない領域を旅する


ナイジェリア出身のローラ・アキンメイド・エーカーストームはストックホルムでベストセラー作家、トラベルフォトグラファーそして受賞歴のあるストーリーテラーとして活動しています。

しかし成功したトラベルフォトグラファーとなるための道のりは簡単ではありませんでした。そしてローラのトラベルフォトの世界で活躍する黒人女性達に光を当てるというミッションのために彼女は様々なクリエイティブの領域を横断し、自身をひとつのブランドのような存在とすることとなりました。

彼女はどのような経緯で業界での地位を獲得し、いかにクリエイティブにおける選択を行い、そして多くの人が夢見る職業を独特のスタイルで現実にしたのでしょうか。


黒人女性フォトグラファーのための道を切り開く

有色人種の女性として、キャリアの初期には自身と似た境遇を経験し、彼女がトラベルフォトグラファーになる可能性を示してくれるメンターを見つけることに苦労したと言います。

「旅というものをずっと愛していたので、旅するストーリーテラーになることが自分の将来だと昔から信じていました」と説明します。「プロのトラベルフォトグラファーへの道を踏み出す最後の一押しとなったのは、私のような黒人女性のフォトグラファーが様々な文化や場所を訪れ、その作品が一流の出版物に掲載されているのを見たことがなかったことでした」

「それを自分のミッションとしました。次の世代のトラベルフォトグラファー達のための新しい道を切り開こうと思ったのです」

ローラにとって、写真業界における機会平等とは、女性が制作のための素材をもっと得られることです。「女性がフォトグラファーになることを奨励するということは、もっとサポートやリソース、プラットフォーム、そして敬意を与えるということです」

キャリアの中で彼女は業界がポジティブな方向に変化していく様を見ました。そして黒人女性を写真という厳しい世界においてサポートする団体も得ることになりました。

「プロのトラベルフォトについては、未だかつてないほど新たな女性フォトグラファーが増えてきているという事実に私自身嬉しく思い、勇気づけらていれます。彼女達はフレッシュでダイナミックな視点を自らの専門分野にもたらしています。私の希望はさらなる支援と注目される機会を提供することで、有色人種の女性フォトグラファーの場所が増えることです」

独自のスタイルをトラベルフォトに持ち込む

トラベルフォトグラファーは世界でも最もエキサイティングな仕事の一つと言えます。そしてローラは業界に飛び込むに当たって様々な困難に立ち向かうにつれ、それらを克服するための最良の方法は自身の作品のクオリティに自信を持つことだったと言います。

「写真誌の編集者の前で自身の作品を見せるための機会を得ることすら困難な挑戦でした」と語ります。「しかし今なお挑戦であり続けていますが、今のところ自分のビジュアルに関する直感を信じ、スキルを磨き、作品を世に出し続けることでその挑戦を乗り越え続けられています」

この自信によって彼女は今ではトラベルフォトの世界で成功した地位を得ました。キャリアを通して、ローラは70以上の国と地域を訪れ、その作品はNational Geographic、 New York Times、 The Sunday Times、 The Guardian, BBC、 Travel Channel、 Travel + Leisure、 Lonely Planet、 Forbesを始めとした数多くの媒体で取り上げられました。

彼女は自身のスタイルを次のように例えます。「言い表すとしたら明るさと希望です。私の油彩画家としての経歴は私の創作の構成と編集の手法に影響を与えています。私のトラベルポートレートは「わたしはあなたを見ている」という言葉を視覚化したマニフェストなのです」

このスタイルは彼女の油絵の経験の影響を受けていると同時に、異なる仕事を繋ぐ赤い糸を形成するように突き進む彼女の姿勢も反映されています。「トラベルフォトグラファーとして、その場所の雰囲気を捉えるカットのほかに、人々が壮大な背景の中でいかに日常生活を送っているかを写し出すような、文化を背景にしたライフスタイルショットやエンバイロメンタル・ポートレートもたくさん取り組みます」

作品を見る人がそこに写っている被写体の目を見て、どんな人物なのか、様々な背景の中にも自らとの関わりを見出すことを望んでいます。

「私はかつて油絵作家だったことが今の作品の編集や構成に影響を与えていることははっきりと感じています。リッチで鮮やかな色彩やコントラストやシャドーを多く含む構図がとても好きです」

一度Instagramを開けば数百万ものトラベルフォトや動画があなたにどのようにユニークなイメージを構成するかの助言を与えてくれるでしょう。しかしローラにとっては、進むべき道を示してくれるのは地元の人々との交流なのです。

「私は開かれた思考で旅をし、交流の時が静かに訪れるのを待っています。それは人々の間の交流であることもあれば、自然と人の交流であることもあります。私は流れに逆らわず、住民たちの知識に耳を傾け、その勧めに従って新しい眼差しで写真を撮るのです」

複数の草鞋を履く

写真の世界で活動しながら、ローラは同時にいくつもの他のビジネスや交流を熱心に行っています。余暇の時間ですら、彼女は写真を撮るのと同じくらいたくさん文章を書いているのです。他者からのインスピレーションを求めている時、彼らが働いている姿、異なるクリエイティブの分野において優れた存在感を放っているものが彼女にとって刺激になるのです。

「アーティストが挑戦をいとわず異なる領域を探究し、自らのクリエイティブにおける能力を伸ばしているのを見るのが好きです」とローラは語ります。「人が真にアーティストやクリエイターになった時、異なる領域を簡単に行き来できると思います。私自身も自らのストーリーを語るために様々な媒体を使用しますし、何よりもそれらの物語がどのように語られたいかで選ぶのです」

「時には写真以上に文章を書く行為がその場所についての感覚を刺激することがあります。別の時には、単純にそのシーンを写真に捉えるだけで言葉は不要になることもあります。私にとってストーリーテラーであることと写真家であることはあまりにも不可分なスキルであって、どちらか一方だけであることを選ぶことはできません」

ローラはそれぞれの分野が互いに強くする源として相互に作用していると信じています。「私はいわゆる二足どころかたくさんの草鞋を履いた人間です。様々なクリエイティブに興味を持ち、追い求めています。このようなマルチな人間は作品へのアプローチが他とは違う形で繋がっています。私は決してクリエイター全てが様々な分野に広く浅く手を出す必要があるとは思っていません。それでもクリエイターは自らの挑戦とインスピレーションのために絶え間なく他の分野の刺激は受け続けるべきだと思います」

写真のビジネスでの成功と同時に、彼女はフィクション小説である‘In Every Mirror She’s Black’やライフスタイル本である‘Lagom: the Swedish secret to living well’などの著書がある作家としても活動しています。さらに彼女はフォトグラファーがプロの世界で活動するためのGeotraveler Media Academyというワークショップも主催しています。

「技術よりも自らの個性に特化しなさい」と彼女は軽い口調で言います。「なぜなら技術は後からいくらでも身につくから。もっとも大事なことは作品を組み立てるための目を養うこと、そして世界を写真家としての頭で処理することなのです」

「自然光について学び、それを使っていろいろ遊びながら自分の雰囲気を写真に落とし込む方法を試しなさい」

「あなたが夢中になれるテーマや主題をまず選びなさい、見る人や出版社があなたに取り上げて欲しいと思われるものではなく。よりパーソナルなプロジェクトが大事なのです」

ハッセルブラッドを使って

トラベルフォトを新たな領域へ

ローラは最近ハッセルブラッド のシステムに乗り換えたところですが、その第一印象はとにかく良いことばかりだと言います。

「長年35mmのデジタル一眼レフを使用していたユーザーとして、ハッセルブラッドX1D II 50Cに移って自分が撮る写真のクオリティーとダイナミズムが増したことを感じています。これまでの24-70や14-24レンズに対してハッセルブラッドでは単焦点を使うことが増えました。ズームに頼ることがなくなり、より撮影から撮影と忙しく動き回ることの多いトラベルフォトグラファーとしての自分の撮ろうとしているイメージの性質について意図するようになりました」

ハッセルブラッド ヒロインに選ばれたローラは、ハッセルブラッドについて語る時エレガント・クオリティ・効率的、という言葉を使います。

「長年憧れていたブランドです。素晴らしい女性フォトグラファーたちの一員となれたというだけでなく、ハッセルブラッドファミリーとしてたくさんの支持やパートナーシップを貰い、これからも自らの創作においてより深く成長できると思います」

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