Hasselblad Heroine

Gigi Chung


複雑な情景を大胆な造形に落とし込む


カリフォルニアを拠点に活動するジジ・チャンは、複雑な情景を大胆な彫刻的フォルムに落とし込みます。自身の美学を意識的に織り込みながら直線、形状やコントラストを強調するのです。彼女の写真作品は、様々なギャラリーやエリート写真コンテストなど、世界中を駆け巡っています。

香港から米国まで、旅はジジの建築と都市空間の写真において大きな役割を果たしました。彼女は、どのようにして世界中で見られることになった自身のスタイルを確立したのか、また、彼女のインスピレーション、今後の計画について語りました。


写真における平等の鍵は教育

新たにハッセルブラッド ヒロインに一員となったジジは、より多くのリソースで女性をサポートすることが、プロの写真業界で平等な表現を促進する鍵であると考えています。「写真における女性の役割について教育する事で、一般の人々の認識を高める事が重要です。女性写真家の作品を紹介するための機会やプラットフォームを作り、女性写真家が新しいプロジェクトを実現するための奨学金や助成金を増やすことも必要です」

このプロセスの一部は、女性がこの分野に入ることを奨励し、挑戦する人がその姿を自身を写す鏡のように思えるメンターを増やすことです。そしてジジはこの分野で大きな計画を立てています。「私は、女性フォトグラファーが互いに共有し、学ぶための指導や相互批評ができるプラットフォームを作りたいと考えています」

「私はインクルージョンが進むことを信じていますし、一流のエディターやキュレーターが、女性写真家の声や物語をますます支持してくれるようになると信じています」

「デジタル中判カメラに対する女性の関心が高まっているのは確かです。特にアジアでは、写真フェスティバルに参加する女性写真家の数が増えており、可能性を感じています」

インスピレーションを得るために、ジジは自分の技術を完成させ続けるために、複数の女性を参考にしています。インスピレーションを受ける人物を尋ねると、彼女はこう答えました。「ビビアン・マイヤーとダイアン・アーバスは、シンプルな日常生活を説得力のある芸術作品として表現する能力を持っています。アニー・リーボヴィッツは、被写体をリラックスさせ、魅力的なポートレートを作成する能力を持っています。そして写真芸術への献身とコミットメントを体現した全てのハッセルブラッド ヒロイン達です」

クリエイティブな媒体からインスピレーションを得る

ジジは建築と都市の写真家を生業としており、そのスタイルは非常に明確です。そして、彼女はこのスタイルを作り上げるために、様々なクリエイティブな分野から要素を取り入れています。

「地元カリフォルニアの建築家や、ルイス・バラガン、リカルド・レゴレタ、リチャード・マイヤー、フランク・ゲーリーの作品を探求するのが好きです」と彼女は説明します。「ダンスや音楽からもアイデアを得ています。すべての芸術形態は相互に関連しており、これらの分野がイメージを喚起し、生命を吹き込むと信じています」

「私は、成長意欲があり、献身的で、困難に直面しても忍耐強いアーティストを尊敬しています」

建築写真の制作に目を向けると、彼女がダンスや音楽から得た教訓のいくつかを思い起こさせます。「良い建築写真は、光を使って色、線、曲線を表現し、空間の雰囲気を強調します」

「都市空間を撮影する際に最も重要な要素は、その場所のユニークさを表現することです。どの建物も独自のダイナミックなリズムを持っています。そのリズムを見つけるのがフォトグラファーの仕事です」

都市空間を撮影することは、ジジにとって全く新しいことではなく、建物や建築に対する情熱は彼女の家族の中に流れています。「私の父は建築を教えていました。父が建築を教えていたので、建物を調査したり、ファサードを見たりすることは、私の成長過程の一部でした。父が好きだったピエト・モンドリアンとマーク・ロスコには、大きな影響を受けています」

「彼らの視点は、私を建築環境の抽象性やまるで振り付けされたような都市空間の並置のパターンに向かわせます。意識的に取り入れることでシーンを抽出し、協調的なミニマリズムのアプローチを目指しています」

受賞歴からギャラリーでの展示まで

香港で生まれたジジは、東京での生活を経て、現在はカリフォルニア州サンフランシスコを拠点に活動しています。異なる文化を経験することは、彼女のユニークな写真スタイルの創造に大きく貢献しています。

「私は、様々な都市を旅し、生活する機会に恵まれました。私はさまざまな芸術形式や建築様式に触れてきました。墨絵であれ、禅の哲学であれ、それらはすべて、私がコンセプトを言葉なしでイメージに変換するのに貢献しているのです」

これらの経験により、ジジは定評のある建築写真家へと成長し、彼女の作品は複数の写真賞やコンペティションでの受賞を経験することとなりました。例えば、Black & White MagazineやKyotographie KG+で取り上げられ、Tokyo International Foto Awardsの審査員トップ5賞、Pollux Awardsの抽象・建築・インテリア部門賞を受賞したことなどです。

受賞歴についてジジは、キャリアを前進させるのに役立ったと語っています。「写真コンテストでの受賞は、露出を増やすことにつながります。私にとって、それは建築に対する私のアプローチが正しいことを確認するためのものです。評価されることは常に名誉なことなのです」

ギャラリーワークの制作過程について、彼女はいつも一貫したテーマに立ち返っています。

「ギャラリーでの展示は、特定のテーマに沿って行われることが多い。まず、その展覧会がどのような観客を対象としているかを決めます」

「2つ目は、一貫したスタイルを示す作品群をキュレーションすること。3つ目は、アーティスト・ステートメントとエキシビション・ステートメントを書くこと」

「最後に、作品を期限内に提出すること。展覧会が開催される前には、必ずバックグラウンド・キュレーションが行われます。撮影時には、イメージをテーマ別に分類しておきます。」

この業界に入るための彼女のアドバイスは、3つのキーワードのようにシンプルです。勇気をもって、粘り強く、オープンであれ。

ハッセルブラッドで完璧な色とディテールを捉える

都会に被写体を決めてその全てのディテールを捉えようと撮影するとき、ジジは彼女のハッセルブラッドを信頼していれば、いつも彼女が頭の中で想像している通りのショットが形になっていると言います。「ハッセルブラッドX1D、XCD45、XCD90mmの組み合わせは、建築写真においてコントラストの高いシーンの撮影を可能にします。中判センサーの優れたダイナミックレンジは、シャドウのディテールを保持しながら滑らかなハイライトのロールオフの画像をもたらし、撮影から印刷までのプロセスに力を与えてくれるのです」

人間工学的にバランスの取れた、象徴的で、魅力的な、、ハッセルブラッドのブランドについて考えるとき、彼女にはそのような言葉が頭に浮かびます。そのためハッセルブラッド ヒロインになることは、2022年、ジジにとってもっともエキサイティングなことの一つとなりました。「私は4年前にハッセルブラッドヒロインが開始されて以来、毎年追っています。他の女性フォトグラファーのストーリーやチャレンジを読むことは、励みであり刺激になります」

「このプログラムが女性クリエーターの物語を認め、女性のビジョンを称え、写真の世界での大胆不敵な探検を奨励することに興奮しています」

2022年以降の計画

写真を学ぶためのプラットフォーム作りの他にも、ジジには2022年大きなプランがあります。「フランクフルト、バルセロナ、ニューヨークのワールドトレードセンターでの展示が控えています。より多くの人に、世界のさまざまな地域から私の作品を見てもらいたいと思っています」

彼女はまた、メタバースの出現や写真業界におけるAIの役割の増大など、今後数年の間に写真界に大きな変化が起こることを予見しています。

「AIで強化された写真ソフト、ドローンによる空撮、没入感のあるアートインスタレーション、写真とファッションのクロスオーバーなどが、近い将来実現されるでしょう。画家の作品の没入体験は見たことがありますが、写真家の作品がこのような形で紹介されるのはまだ見たことがありません。このような写真によるアートインスタレーションで、見る人の認識がどのように変わるのか、興味深いです」

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