Hasselblad Masters

Volume 7: Enlighten

「私にとって、写真は美の本質をを見い出し、理解するのになくてはならないものです。写真を撮ることで、私は、その美しさに触れることができ、同時に、つながることができるのです。」と、ハッセルブラッドマスター 2021のランドスケープ／ネイチャー カテゴリーの受賞者である施红华（Shi Honghua）は述べています。

施氏が2003年に写真を始めてから、20年ほど経ちます。フォトグラファーとしてのキャリアを開始してから最初の10年は、主に商用目的の撮影で世界中を飛び回っていました。2014年に、彼は自身の地元である江西省婺源県に戻りました。この土地は、中国語の「山水」（山や河川からなる自然美）をまさに体現する山々や川に囲まれた場所で、忙しい日々に別れを告げた施氏は、徐々に自然の美しさに魅了され、ゆっくりとしたペースの生活に馴染んでいきました。このライフスタイルの変化は、彼の写真の被写体選びにも影響しました。風景写真を撮ることが多くなり、次第に写真の意味について、より深く理解するようになっていきました。

写真のフレーミングは、彼の物事への考え方、視点、そして、感情を表していました。創作活動中、自分自身の現在の状態や精神を反映させることができることは、彼にとって、とても心地の良い体験でした。彼は、自身の状態が違えば、写真も全く違った種類の作品になると感じ、一つ一つの撮影が、その時の精神状態を視覚化する行為だと考えています。

施氏は、中国の伝統的な山水画が好きで、中国の宋や元の時代の画家や詩人のように風景を捉えたいと常に考えています。また、彼は、「生命力」や「描写力」（画の六法の「気韻生動」と「応物象形」）に優れた合成写真のパイオニアである写真家 郎静山(Lang Jingshan) を尊敬しています。彼は、写真を通して、作品を見る人々にありのままの自然を感じてもらい、彼自身の心象風景や精神を伝えたいと願っています。

施氏は、「良い写真」の普遍的な定義を定めることは不可能だと思っています。ドキュメンタリー写真は現実の移りゆく瞬間を捉え、サロン写真は美しさや魅力を讃えます。優れたフォトグラファーは、これら2種類のスタイルを掛け合わせ、生き生きとした現実と洗練された美が調和した、新しい形の写真作品を創り上げることができます。

「自分の作品を風景写真として定義することはできません。『現代山水画』と呼んだ方が的確かもしれません。」と、施氏は自分自身の作品について述べています。一般的な風景写真家とは異なり、彼は、山々や川からなる自然の中に身を置き、撮影中、時間をかけて、先人たちの教えを理解します。彼は、自然が与えてくれた静寂と平静を、そして、彼自身が持つ山水画の哲学を、幽玄で現実離れした写真に反映します。

インスピレーションをテーマにした新シリーズの撮影では、施氏は初めてX2D 100Cを使用して、自然を対象に撮影しました。撮影は、三清山、黄山、雁蕩山にて、約1週間かけて行われました。このシリーズでも、施氏のユニークなスタイルやコンセプトが見て取れます。

X2Dを使った撮影中、施氏がこのカメラに持った印象は、「シンプル」で「ストレート」でした。フィルムカメラを使って撮影していた時代、優れた画質を発揮するHasselblad 503CWを、彼はメインカメラとして使っていました。ハッセルブラッド マスターの称号を受賞した彼は、今回、X2Dを使い、今までとは違った、デジタルカメラのシームレスな撮影を体験する機会を得ることができました。このカメラは、他に類を見ない正確な色合いと画質で、アーティストの創造力を刺激します。

X2D 100Cは、1億画素 裏面照射型中判センサーを搭載しているため、施氏は、画質の心配をすることなく、撮影に集中することができました。また、このカメラで撮影した写真の出力や後編集に関しては、16bitの色深度と15ストップのダイナミックレンジにより、優れた画質を実現し、山々や川の雄大な自然美を容易に再現することができます。この卓越した技術と構図調整のしやすさにより、施氏は、見る人々を驚かせ魅了する、現実とは思えない美しさを持った作品を制作することができました。

施氏は、これからも、ハッセルブラッドカメラを使いながら、自然の中にインスピレーションを求め、山水画の要素を活かし、美しさの定義を追い求め続けます。

施红华について

施红华（Shi Honghua）は、若い頃、何か好きなスキルを学びたいと思い、偶然にも、写真を選択しました。

2003年に写真を始めてから20年近くになります。異なるキャリアステージにおいて、異なる目的を持って撮影に挑んできました。しかし、商用目的の撮影に携わり10年以上経ったにも関わらず、彼は写真の意味とは何か見つけられずにいました。2014年に、彼は自身の故郷に戻り、自然豊かな環境で、人生を取り戻しました。その時、彼が撮影する被写体にも変化が生じました。彼は、日々、山々や河川を撮影することで、彼にとっての写真の意味に気づくことができました。