TERUYASU KITAYAMA

ハッセルブラッドの中判デジタルで広がる天体・星景写真の世界

大きなセンサーで光を捉え、高い描写性にアドバンテージを持つハッセルブラッドの中判デジタルカメラ。ハッセルブラッドで捉えた夜空は、普段肉眼で見ることができない特別な顔を見せてくれます。天体に魅せられ、星景写真家となった北山輝泰さんに、中判デジタルで撮影する星空の魅力について伺いました。

2020年 灯台に降るペルセウス座流星群
X1DⅡ-50C/XCD21mm/ISO3200 f4 32秒 (静岡県下田市)

ご自身が天体・星景写真に興味を持ったきっかけは何ですか?

大学では芸術学部に所属し、体系的に写真を学んでいました。4年に進級し、科学写真を得意とした教授のゼミを受講したところ、その教授が無類の天体好きでゼミ室には天体写真や星景写真が数多くありました。それに目を通したことが星空に興味を持ったきっかけです。卒業後は福島県に移住し、本格的に天体・星景写真の創作活動を始めました。

北アメリカ星雲
H6D-100C/Vixen VSD100 F3.8 AXD赤道儀/ISO1600 64秒 4枚を加算平均合成
(山梨県 南都留郡 富士河口湖町)

天体・星景写真を撮影する面白さ、醍醐味はどこにありますか?

淡い星雲や、渦を巻いている銀河の様相など、肉眼では見ることができない世界を写し撮ることができるのが天体写真の醍醐味です。基本的には30秒以上シャッターを開けて撮影することになるため、三脚も併用し撮影を行いますが、被写体とじっくり向き合いながら時間をかけて撮影するのは、日中に撮影する写真とはまた違った面白さがあります。季節や時間帯、撮影場所によって見られる星空が変わるため、事前に様々なシミュレーションを行いながら、狙った星空を撮影するプロセスに非常にやりがいを感じます。

月明かりに照らされる一本桜
H6D-100C/HC35mm ISO3200 f3.5 32秒 (長野県箕輪町)

天体・星景写真を撮影する上で、ご自身と他の写真家との差別化ポイントは何ですか?

天体や星景写真では、ほぼ100%、RAW現像を行います。そのため、作品の個性を出すために過度な強調処理をしがちになりますが、私はできるだけ自然に星本来の色味を出すことを重要視しています。肉眼で見上げた星空の印象に近い作品を残したいといつも思っています。

ハッセルブラッドの中判デジタルカメラは、通常のフルサイズのカメラと比べて、天体・星景写真を撮影する上でどのような利点がありましたか?

トリミングをしても画素に余裕があることがとてもメリットだと感じています。小さな天体をトリミングして大きく見せることもできますし、天体撮影で気になる周辺減光も、トリミングで解決してしまうことができます。

またダイナミックレンジが広く、RAWデータに含まれている情報が他のカメラと比べて豊かな点も天体・星景写真を撮影する上で大きなメリットでした。例えば、月明かりがない夜に星景写真を撮影しようとすると、暗部のディテールがほとんど出ない場合が多いです。そこに見せたい情報があった場合は、無理やりライトで照らすなどの作業が必要になり、作品があたかも人工的で不自然なものになってしまいます。ハッセルブラッドのカメラは、その暗部をRAW現像で持ち上げても階調が著しく失われるということがないので、自然な形でディテールを見せることができます。

天体写真では、撮影の前にまず赤道儀の極軸合わせというセッティングをする必要があります。このセッティングの精度が高ければ追尾できる限界のシャッター速度も長くなりますが、正確なセッティングを行うためには、専用の機材や多くの撮影経験が必要になります。そのため、一つのやり方として、短い露光時間の写真を複数枚撮影して加算平均合成をする技法があります。そうすることで、足りない露出を後で補うことが可能になります。ハッセルブラッドの中判デジタルカメラは、広いダイナミックレンジによって短い露光時間でも、たくさんの情報を捉えることができるので、この技法と組み合わすことで美しい天体写真を作ることが可能になります。

回転花火銀河
H6D-100C/Vixen VSD100 F3.8 AXD赤道儀 ISO1600 64秒 4枚を加算平均合成
(山梨県南都留郡富士河口湖町)
H6D-100Cを使った撮影シーン

今年から来年にかけて、天体の世界で話題になりそうなニュースやトピックがあれば教えてください。

毎年安定した出現数を誇るのが、世界三大流星群に名を連ねている、ペルセウス座流星群とふたご座流星群です。中でもふたご座流星群は、12月の空が澄んでいる時期に流れる流星群のため、晴れていれば多くの流れ星を見ることができるでしょう。2020年は月明かりもなく最良の条件が整うため、是非とも見てもらいたい天文現象です。また12月下旬には、木星と土星が非常に近い距離で接近します。特に一番接近する21日と22日には、望遠鏡の同一視野内でも2つの惑星を同時に見ることができます。さらに宇宙分野では、順調にいけば、はやぶさ2が2020年末に地球に帰還予定で、これも話題になるでしょう。

天体撮影にチャレンジしてみたいと思っている方にアドバイスをお願いします。

天体撮影はハードルが高いと考えている方が多いかもしれませんが、今のデジタルカメラは高感度撮影でも非常に綺麗な写真を撮ることができ、長時間露光をすれば星の明かりを捉えることも容易です。もちろん美しい天体写真を撮影しようとすると、赤道儀や頑丈な三脚など、色々なものが必要になりますが、まずはお持ちのカメラで、暗い夜空に向けて30秒間シャッターを切ってみてください。肉眼で見ることができない星空の世界が待っていますよ。

M81, M82
H6D-100C/Vixen VSD100 F3.8 AXD赤道儀/ISO1600 64秒 4枚を加算平均合成
(山梨県南都留郡富士河口湖町)
バラ星雲
H6D-100C/Vixen VSD100 F3.8 AXD赤道儀 ISO1600 32秒 4枚を加算平均合成
(山梨県南都留郡富士河口湖町)
南伊豆の美しい天の川
907X 50C/XCD21mm ISO800 f4 128秒 (静岡県 南伊豆町)

プロフィール

北山輝泰 星景写真家 ビデオグラファー

1986年東京生まれ。

日本大学芸術学部写真学科 卒業

天体望遠鏡メーカーで営業として勤務後、星景写真家として独立。天文雑誌「星ナビ」の

ライターをしながら、全国各地で写真講師の仕事を行う。

星景写真を始めとした夜の被写体の撮影について、座学・実習を通し学べる「NIGHT

PHOTO TOURS」を運営中。詳細はFacebookページにて。

http://kitayamateruyasu.com

https://twitter.com/astro_teru/

https://www.facebook.com/teruyasu.kitayama/

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