Hasselblad product knowledge -Vsystem-

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Vsystemの使用方法や製品知識をご紹介します。

マガジンスライド

Vシステムカメラのフィルムマガジンにはマガジンスライド(遮光板)が入る仕組みとなっています。マガジンスライドを差し込んでおくことで、フィルムを撮り終わる前でも、マガジンを取り外し、別なマガジンへと換装することができる仕組みとなっております。ISO感度の異なるフィルムやフィルムの種類を状況に応じて変更することができるのが、この仕組みの利点です。

また、フィルムカメラの全盛期にVシステムカメラを使用していたフォトグラファーは、1本のフィルムを撮影している間に、もう一方のマガジンをアシスタントに準備させることで、フィルム装填に要する時間を短縮するといった使い方もありました。

 

マガジンスライドはフィルムの前に差し込まれているため、差し込んだことを忘れて撮影すると、露光がされず何も映っていないネガとなってしまいます。これを防ぐため、Vシステムカメラはマガジンスライドが差し込まれたままではレリーズを押し込むことができないようなロック機構が組み込まれています。そのため、露光されないといったミスは起きないようにできていますが、狙ったタイミングで撮影が行えるようにマガジンスライドを抜いておくようにしましょう。

Tレバー

 

Vシリーズのボディである500C、500C/M、503CXの三機種には、レリーズボタンにO/Tの切り替えレバーが備わっています。

このレバーの使い道は主に2つあります。

 

1つ目は、レリーズコードを使わずに長秒露光を行う際に使用する。

長秒露光時はレンズ側よりシャッタースピードをB(バルブ)に設定しておきます。通常であれば、この状態で長秒露光を行う際にレリーズコードを使用し、押し込んだ状態を維持します。

しかし、このレバーをT側に下げておくことで、レリーズコード無しでシャッターを押し込んだ状態を維持することができるようになります。

2つ目は、Cタイプレンズをレンズのセルフタイマーで使用する。

500シリーズカメラに対応する最初期のレンズ、Cタイプレンズにのみセルフタイマー機能が備わっています。露出等の設定を終えた後で、レバーをT側に下げ、Cタイプレンズ側面のレバーをVに設定します。この状態でレリーズを切ると8秒-10秒後に撮影が行われます。Cタイプレンズは、レンズ内でシャッター速度やタイミングを制御しているため、ボディ側の設定は必要ないと思いがちですが、ボディの背面にはバックシャッターが備わっております。

バックシャッターを開いた状態を維持しなければ、レンズから入った光がバックシャッターにより遮られてしまうので、セルフタイマーの使用時にはTのレバーの存在が欠かせないのです。

M X Vの意味

 

500シリーズやELシリーズにて使用できるCタイプレンズには、M X Vの刻印がされたレバーが備わっています。レバーのポジションは、下のロックレバーを正面側に押し出しておくことで切り替えが可能となり、それぞれ次のような役割を持っています。

 

まずは、Mのポジションについてですが、このポジションは現在ではあまり使用することはありません。なぜならば、このポジションは現在主流となっているX接点でシンクロを取るストロボでなく、M型フラッシュバルブ(レンズシャッター用閃光電球)を使用するためのポジションだからです。

フラッシュバルブは主に20世紀に活躍した写真機用照明ですが、後に繰り返し使用のできるエレクトロニックフラッシュの台頭により、フラッシュバルブを使用するカメラは減っていきました。

 

次に、Vのポジションですが、セルフタイマーの機能を持っています。

セルフタイマー機能につきましては、Tレバーの記事でも触れておりますが、このポジションにレバーをセットしておくことで、セルフタイマーを使用することができます。

セルフタイマーは、レリーズボタンを押してから8-10秒でシャッターが切れる仕組みとなっております。

使用時の注意点として、レリーズボタンを押したままの状態をキープしておかなければなりません。レリーズボタンが押されていなければ、ボディの後ろに備わったバックシャッターが閉じてしまい、8-10秒後にレンズシャッターから入る光を遮断してしまうためです。

500C/Mや、503CXといった前期のボディはTレバーを使用することで、レリーズボタンを押した状態を維持できますが、503CXiや503CWなどのTレバーを持たないボディでセルフタイマー機能を使用したい場合は、固定機能を持つレリーズケーブル等でレリーズボタンを固定しなくてはいけません。

 

最後に、Xのポジションですが、こちらはX接点でシンクロを取るエレクトロニックフラッシュ、つまりストロボを使用する際に設定しておくポジションです。そのため、現在のストロボでもシンクロコードを接続することができるものであれば、レバー上の端子にシンクロコードを接続し1/500までの全速同調が可能です。

Cタイプレンズ以降に発売されたCFやCFiといったタイプのレンズにもフラッシュ用の端子が備わっていますが、こちらは全てX接点でシンクロを取るための端子となっております。

 

フラッシュバルブとエレクトロニックフラッシュで設定を切り替えなくてはならないのは、この2つのフラッシュは発光のタイミングが異なるためです。この切り替え機構は、2つのフラッシュが混在する20世期中期に活躍したCタイプならではと言えるでしょう。

ハッセルブラッドの持ち方

ハッセルブラッドのVシステムカメラは、ウエストレベルファインダーを標準装備としていることもあり、一般的なカメラと比較して、やや独自な形状をしています。そのため初めて触った際は、どのように構えるのかがわかりにくいかもしれません。

500シリーズやELシリーズは、左手だけで下から抱えるるように持つことを想定しています。また、同じくレリーズボタンも左手で操作します。右手は撮影時はカメラに添えるようにしますが、それ以外のタイミングでは右手はフリーな状態にしておきます。そうすることで、絞りやシャッタースピード、ピントなどの操作が行いやすくなり、撮影後の巻き上げもスムーズに行うことができます。

現在では、中判フィルムカメラにて、連続撮影を行うことは少なくなりましたが、フィルムを用いてのスタジオ撮影などでは連続撮影のしやすいこの持ち方が非常に重要でした。

Cタイプレンズの絞り込み

プレビューハッセルブラッドのCタイプレンズは、500シリーズやELシリーズで使用ができるシャッター内蔵のレンズです。

レンズシャッターは、常に絞りが解放値になっており、シャッターを切る瞬間のみ、設定した値へ絞り込まれるようになっています。絞りが常に開放になっていることで、常に明るく見やすいファインダーを実現していますが、被写界深度は最も浅い状態のままということになります。

もしも、撮影時にどれくらいの被写界深度になるのかというのを確認したい場合には、絞り込みプレビューが有効です。

絞り込みプレビューを使用すると、現在設定している値まで絞り込まれます。もちろん、カメラに入る光量は減少するためファインダー自体は暗くなりますが、撮影前に被写界深度を確認することが可能です。

絞り込みプレビューを行う際は、レンズを正面から見て左側面についていストップダウンレバーを上に押し込みます。このレバーは開放値以外に設定している時のみ押し込むことができます。

絞り込みプレビュー状態を終了したい時は、絞り値を一度開放値まで移動させると、通常の状態へと切り替わります。

CFタイプレンズ以降の絞り込みプレビュー

CFタイプ以降のレンズでの、絞り込みプレビューの方法はCタイプレンズと異なります。まず、ストップダウンレバーの位置が正面から見て右側に配置される様になりました。レバーを下に押し下げることで絞り込みプレビューを行うことができます。

また、Cタイプレンズでは、開放値に設定することでプレビュー状態が解除されてしまう使用でしたが、CFタイプ以降のレンズでは開放値に設定してもプレビュー状態が解除されることはありません。プレビュー状態を解除する際は、ストップダウンレバーの下側を銅鏡の方へ押すと、自動的にレバーが元の位置に戻ります。

解除の際、銅鏡側に押さず、無理に上側へレバーを戻そうとすると、ストップダウンレバーの故障につながるのでご注意ください。

低速シャッター時の注意点

Vシステム用レンズで、名前にCがつくタイプのレンズにはレンズシャッターが内蔵されています。そのため、シャッター速度や絞り値はレンズ側で設定を行う仕組みとなっていますが、1/1秒から1/4秒までの低速域にのみラインが引かれております。これは一種の警告のようなもので、低速域の使用時に気をつけなくてはいけないことがあるためです。それは低速域の使用時に、設定しているシャッター速度よりも長い時間、レリーズボタンを押してなくてはならないということです。この注意事項はTレバーの記事でも触れておりますが、ボディの後ろに備わっているバックシャッターはレリーズボタンを押している間だけ開いているからです。

例えば、シャッター速度を1/1秒に設定しているときに、1/2秒でレリーズから手を離してしまうと、レンズから入る光はバックシャッターに遮られ、0.5秒しか露光されなくなってしまいます。なお、同じ低速シャッターでも、バルブ機能はレンズの開閉に合わせてバックシャッターが閉じる仕組みなので、この問題は発生しません。

また、ELシリーズで低速域を使用する際はさらに気を付けなくてはなりません。ELシリーズはレリーズから手を離すとバックシャッターが閉じるだけでなく、フィルムとレンズの巻き上げを行います。レンズシャッターが露光作業を行ってる間に、ELのカメラボディが自動巻き上げを行うと、レンズシャッターに大変な負荷がかかり、レンズの故障となる場合があります。そのため、低速シャッターを使用する際は、設定したシャッター速度よりも長くレリーズボタンを押すように心がけをお願いします。

フォーカシングスクリーン

フォーカシングスクリーンは、Vシステムカメラの大きな特徴の一つです。ハッセルブラッドのスクリーンは、明るくて見やすいと定評があり、導入の理由となった方も多いはずです。Vシステムカメラはモジュール式と呼ばれるコンセプトを持っており、カメラのアクセサリーや、パーツなどをご自身で外し、用途に応じて変更いただくことが可能です。

500C後期型以降のVシステムカメラでは、フォーカシングスクリーンもご自身で取り外していただき、より使いやすいものへと変更していただくことが可能です。フォーカシングスクリーンには、大きく分けて3つのモデルがあります。500C/Mなどの前期のボディに標準装備されていたスクリーンは、スタンダートスクリーンと呼ばれ、当時のウエストレベルファインダーとしては見やすくピントが掴みやすいと評判でした。

503CXなど、中期のボディに標準装備されたスクリーンは、アキュートマットスクリーンと呼ばれ、スタンダートスクリーンと比較しても大きく明るさが向上しました。しかし、明るい場所などではピントの山が掴みにくく、スタンダートの方が好みというカメラマンもいたそうです。

それを受け、503CWなどの最終期のモデルには、アキュートマットスクリーンを改良した、アキュートマットDスクリーンが標準装備されました。これはアキュートマットスクリーンの明るさをそのままに、コントラストが高くなるよう改良を加え、ピントの山を掴みやすく改良したものでした。

スクリーンの見分け方ですが、スタンダートスクリーンと、アキュートマットスクリーンは明るさが大きく異なるため、ユーザーであればすぐに判断がつきますが、外見的な違いはありません。逆に、アキュートマットスクリーンと、アキュートマットDスクリーンは、明るさに違いはありません。しかし、アキュートマットDスクリーンには、上から見た時にスクリーンフレームにV字の切れ込みが入っておりますので、そこで判断をすることが可能です。

クイックカップリングについて

ハッセルブラッドのVシステムカメラの底面には、クイックカップリングプレートと呼ばれるプレートが備わっています。これは、現在では広く使用されているクイックシューと同じ役割を果たしており、別売のトライポッドクイックカップリングと呼ばれる製品をあらかじめ雲台にセッティングしておくことで、スムーズな着脱を実現します。

現在では、クイックシューを採用している三脚は一般的となりましたが、ボディにプレートが最初から装備されているカメラというのは珍しいのではないでしょうか。なお、Vシステムカメラのクイックカップリングプレートには2つの種類があります。

前期型のボディに標準装備された「クイックカップリングプレート」と、後期型のボディに標準装備された「クイックカップリングプレートS」です。

クイックカップリングプレートSは、前期型のものに比べ、厚みがあるのが特徴です。

ELシリーズについて

ハッセルブラッドの500シリーズは電源を使用することなく、機械部品のみで駆動するオールメカニカルのカメラでした。一方、電源を使用することで、よりスムーズな撮影を実現したシリーズがあります。このカメラはエレクトリックから名前を取り「ELシリーズ」と呼ばれます。

ELシリーズには5つの機種があり、古い順から500EL、500EL/M、500ELX、553ELX、555ELDです。

ELシリーズの特徴は、電池を電力源とすることで、巻き上げ操作を自動化するほか、連写性能に優れています。特に、自動巻き上げは撮影後にファインダーから目を離したり、構図がずれることなく撮影を行うことができるため、被写体に集中できるといったメリットも存在します。

ハッセルブラッドグローバルアンバサダーである、プラトン氏は、ELシリーズの最終モデルである555ELDを用いて、世界中の著名な人物を撮影しています。

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