世界をこの手に - ハッセルブラッドがもたらす「そのままの光」

別所隆弘

2019-02-25

Tags: X System X System Lenses X1D

いつも最初に写真を見せる友人に開口一番言われたのは「あれ、現像変えた?」だった。

そんなつもりはまったくなかったのだが、そう言われれば確かにこれはいつもの私の写真と少し違う。

X1D-50c


そう言えば現像段階から、友人が感じた違いを私自身が感じていた。この写真、現像にかけた時間はせいぜい5分ほどだ。巨大なiMacの5Kのディスプレイに出現した5000 万画素を超える中判のデータは、見た瞬間に目を見開くような強烈な存在感と階調だった。余計なことをしないでも、そこにただ「ある」ということの鋭さ、重たさ、美しさ、尊さ。世界が「そこ」に存在するということを、カメラを通じて感じたのは、HasselbladのX1Dで撮った今回の機会が初めてだったかもしれない。

光はあるべきように明るく、闇はあるべきように暗い。そしてその2つの極を繋ぐグラデーションは、0と1のデジタルであることを忘れさせるように、豊富な階調を伴って美しい色彩を描く。見れば見るほど「手を付ける必要がない」と唸るような、美しい自然世界が取り込まれている。そう、だから現像なんてほとんどしていない。写真家として恥ずかしくなるほど、これは生のデータに近い写真なのだ。職場放棄と言われても、返す言葉もない。でも、もし次の写真を超巨大な印刷で見てもらうことが出来れば、私の言いたいことは伝わるんじゃないだろうか。

X1D-50c


冬の鈍色、白化した倒木の肌理、遠くの空に見える夕焼けの予感、琵琶湖越しに見える山の頂上のわずかな雪の白。この完成された冬の夕暮れの重たい美しさのすべてを、できるかぎり「そのままに」伝えたかったのだ。

友人が「現像変えた?」と言ったのもわかる。これまでの私だったら、この場面をもっと「魅せよう」と思ったことだろう。でも「魅せる」必要なんてないのだ、そこにあるのだから。50年前、初めて月に降り立ったニール・アームストロングがHasselblad EDCを使って、人間の誰も目にしたことのない世界を切り取った時も、もしかしたらた同じ気持ちになったのではないか、そんなことさえ想像してしまう。かつて遠い遠い月面の光と闇を捉えたカメラは、2019年の今、地球で最も美しい光景を捉えるカメラの一つとして、この世界に君臨している。

しかもそれは単なる「伝統の力」ではない。Hasselbladがかつてカメラの最先端を果敢に走ったように、今もHasselbladのカメラは、実に尖った最先端を走っているのだ。上の写真を撮った直後、私は少し遠いところを美しく照らし始めたある光景を収めたいと思って撮ったのが次の写真だ。

Mavic 2 Pro


目の前の植え込みが邪魔して、撮りたいものが捉えられない。いかにHasselbladといえども、「高さ」だけはどうしようもない。ただし、空を飛べれば別の話。一気に広がる世界、Hasselbladのレンズを搭載したMavic 2で撮影すれば、Hasselbladの美学はそのままに、無限の視野を獲得できる。その広大な視野は、ドローンならではの開放感だ。そこに夕焼けの微細な階調のすべてを捉えるHasselbladのレンズが乗ったとき、ついにドローンは、「翼を得たカメラ」という命題を達成したと言える。これまでどうしてもコントラストや色再現性で既存の一眼レフに一歩譲るところがあったが、Hasselbladを搭載したMavic2のカメラ性能は、ドローンを本当の意味で「撮影機材」として信頼できるレベルにまで引き上げた。そう、Hasselbladのミラーレス中判カメラと、Mavic2というのは、世界のあらゆる部分を極めて美しく切り取る、この世界で最も強力なタッグなのだ。

X1D-50c


だからこそ、上の写真のように空気感の全てまでとりこむような中判の解像度をX1Dで楽しみながら、Mavic2では人間の足では決していけない場所へと飛び上がって、次の写真のように同じ場所からまるで違う「画」を切り取るというような、撮り手のインスピレーションを強烈に刺激する撮影が可能になる。ぜひともこの史上最強のコンビを、多くの人に味わってもらいたい。

Mavic 2 Pro

Author

別所隆弘
フォトグラファー/文学研究者

「最高の一枚を写し出す写真術」、「心を震わせるドラマチック写真術」など数々の著書を手がけ、National Geographic社主催の世界最大級のフォトコンテストであるNature Photographer of the Year "Aerials" 2位を受賞。文学と写真、2つの分野で模索しつつ、「反射」というコンセプトに辿り着き、さらに新しい表現で芸術に昇華させていく。

Twitter @TakahiroBessho
Instagram @takahiro_bessho

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