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インタビュー:柏谷 匠|TAKU KASUYA

Hasselblad Japan Interviews vol.3

FinalTaku_1832866Photo: Cedric Diradourian

ハッセルブラッドのプリミティブな機構に惹かれる、フォトグラファー・柏谷 匠。2012年から約2年間にわたりメキシコに拠点を移し、南米各地を旅したときから、ハッセルブラッドが愛機だという。キャラクターのある人物が登場する、決定的瞬間を捉えた写真は、観る者の脳内にストーリーを産む。柏谷の幅広い活動と、南米で得たものについて、話を聞いてみた。

 

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フォトグラファーを志したきっかけは。

2000年に金沢美術工芸大に進学したのですが、専攻は彫刻でした。大きな彫刻作品を作っても置いておくスペースがないので、壊す前にいろんな方向から写真を撮るようになったのがきっかけです。どういう風に撮るとよく見えるのか試行錯誤をするうちに、どんどん写真が好きになっていきました。

ポートレイトやランドスケープなどさまざまな写真を撮られていますが、全体的にシークエンスではなく、一点で完結する写真が多いですね。

もともと映画が好きなんですけど、映画って見るのに時間がかかりますよね。でも映画のチラシは、一枚の写真で物語を感じさせるじゃないですか? 一瞬ですべてを語るというか。それが写真の面白さだと思うので、組み写真をあまり意識せず、一枚で物語を語る写真を目指しています。

 

ファッションや広告のフィールドでも活躍されていますが、最近のお仕事を教えていただけますか。

最近だと、BEDWIN & THE HEARTBREAKERS というブランドのヴィジュアルブックの撮影が楽しかったですね。デザイナーの方が写真好きで、リチャード・アヴェドンの『In the American West』(1979〜89年にアメリカ西部をまわり、そこで暮らす人々の姿を捉えたポートレイト集)と、僕のポートレイトに似たような雰囲気を感じるといってもらえて、フィルムで正面からのポートレイトを撮ってほしいと言う依頼でした。ハッセルブラッドで撮影し、モノクロ写真は自分でプリントしました。

 

カメラは、どのように使い分けていますか。

ざらざらとした質感がほしいときは、35mmを使いますが、撮っていて気持ち良いのは、ハッセルですね。巻き上げて、押したら、ミラーがパカって開いて、露光する……撮っているなっていう実感があります。機構がプリミティブなのが、自分の感覚と合います。デジタルだと、撮り過ぎてしまって。ハッセルブラッドで撮ると、3〜4枚撮ったら、良いのが撮れたなとわかる。シャッターのタイミングが僕と合っていて、被写体が目をつむっている写真が、ほとんどないんですよ。
また、ハッセルブラッドのスキャナーを使うこともあるのですが、粒子ひとつひとつにピントが合い、歪みがない。スキャナーによってはフラットに読み取るので、線が歪む場合もありますが、ハッセルブラッドはフィルムを伸ばして真上から直接スキャンするので、安心感があります。僕は、写真の黒枠もスキャンするので、助かっています。

 

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ハッセルブラッドを使い始めたきっかけを教えてください

スタジオに勤務していた時代、よく広告の現場でも使っていたのですが、初めてのマイ・ハッセルブラッドは、メキシコで購入しました。メキシコ、キューバ、ボリビアなど南米に2年間ほど滞在していたときにメキシコの港町で、何十年に一度のハリケーンに見舞われ、一眼レフの隙間から汚れが入ってしまったんです。掃除がしにくい作りになっていて、修理をするためには、車で14、5時間先のメキシコシティまでいかなければならなかった。Mamiya 7も持っていたのですが、もっと被写体に寄りたかったので、ハッセルブラッドを買うことにしたんです。
ハッセルブラッドの良いところは、電気を使わないですし、汚れたら自分で掃除できるのも魅力だと感じました。メキシコには、ロバを移動手段に使う人たちがいるのですが、それはガソリンスタンドが遠くにあるからなんです。何キロも先にあるガソリンスタジオに行っても、戻ってくるのでそのガソリンを消費してしまう。なんだか、シチュエーションが似ているように感じました。

 

ストレートなポートレイトが多いですよね。被写体とは、どのようなコミュニケーションを取っていますか。

撮りたいと思った人の撮りたいと思った姿を、声をかけて撮らせてもらっています。例えば、もたれて休んでいる人がいたら、そのもたれて休んでいるところがかっこいいから、そのまま撮らせてほしいと伝えます。南米の人たちは、生活に余裕があるというか、急いでいないですよね。「写真撮らせて」と言われても、焦らない。日本だと身構えられるけど、南米はゆったりとしていて、お願いしやすかったですね。
また、どこも太陽光線が強かったので、顔のディテールを出すために、逆光か半逆光で撮るようにしました。順光だと、光が強すぎて、影がでてしまうので。自分が被写体の周りをぐるぐる移動して、適当なポジションを探って撮っています。

 

TAKU5 TAKU6 南米には、独自の時間の流れがありそうですね。

そうですね。例えば、メキシコの人たちのテクノロジーの受け入れ方も独特です。彼らは、近代的な生活を必要な分だけ、すでにある生活に受け入れるんですよ。洞穴みたいなところに住んでいるけれど、太陽光発電で電力を得ている人たちもいました。インターネットカフェでも、日本だとまずは建物をスケルトンにして、パーテーションを立てて作るけど、メキシコは、もともとあったテーブルの上にパソコンを5台くらい置いて“インターネットカフェ”の出来上がり。自分たちをテクノロジーに合わせていくのではなく、自分たちの生活に必要なものを受け入れていく姿からは、学びがありました。
キューバのクラシックカーは、ハッセルブラッドと一緒で電子部品を使っていません。なので、互換性のあるパーツとつなげれば動くんですよね。壊れることはあっても、直せないことはないんです。
また、コミュニケーションでも、自分に取り入れたいと思った部分があります。あるピラミッドを見に行ったときに、全体が見える小高い丘から写真を撮りたかったのですが、セルフィーをする観光客がひっきりなしにいて。日本人なので、ずっと待っていたのですが、そこにメキシコ人がやってきて、「僕、写真撮りたいからちょっとどいて」と軽くいって、パシャっと撮影して去っていったんです。そうやって声をかけて、自分がさっと立ち去れば、両方がハッピー。本当はそっちの方がコミュニケーションとして成立しているなと思いました。

 

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南米に行ったことで、フォトグラファーとして成長したことは何ですか。

フォトグラファーとして自信が持てるようになったのは、2年半ほど南米に滞在したことが大きいと思います。どんなところでも、撮れるようになったと思います。例えば、いきなり、「ここで撮って」といわれても応えられますよ(笑)。


柏谷 匠|TAKU KASUYA プロフィール

金沢美術工芸大学 彫刻科卒。

TAKU8電通スタジオ、YSF契約フォトグラファーを経て独立。

広告、ファッション、雑誌、CD等、様々な媒体で活躍した後、2012年にメキシコに制作の拠点を移す。

2013年には中南米各地を旅して撮りためたシリーズ作品”La voz del mar”がメキシコの現地雑誌に特集され、オアハカで写真展を開催されるなど注目を浴びる。
2014年末に東京に拠点を戻し、広告・ファッション撮影以外にも、ブランドとのコラボによるフォトTシャツが全国展開されるなど活躍の幅を広げている。

WEB: takukasuya.com


Writer: 東 直子

 

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