Hasselblad Masters

Volume 7: Enlighten

Granatalm, Finkenberg, Austria
Albrecht Voss, X2D 100C, XCD 2,5/38V

「建築物がその環境に自然に溶け込めるように、建築家が設計に注ぐアイデアや工夫、努力を、私は尊敬しており、写真を通して、このことを表現したいと思っています。」

何年も前、Albrechtは、ちょっと変わった旅先リストを作成し始めました。よくある旅先リストとは違い、彼のリストには、訪れて写真に収めたい建物の名前が並んでいました。

建築写真家Albrecht Vossは、小さなファサード(建築物正面部)のディテールから壮大な全景まで、あらゆるアングルから建築物を撮影します。しかし、彼が撮りたい建築イメージは、車や人々、その場所にある礎となるもの全てが、周囲の環境や建築物と自然に相容れる様子を写し出している写真です。

「私は、X2Dを持って、アルプス山脈にある山々の頂上に行きました。霧や雨、凍てつく寒さの中で撮影しなければならない時がありました。氷河の上や雷の中で撮影することもありましたが、このカメラのパフォーマンスにはいつでも満足できました。

Granatalm, Finkenberg, Austria
Albrecht Voss, X2D 100C, XCD 4/21

このような、環境と建築物が相容れるユニークな瞬間を撮影するために、Albrechtは、まず的確な構図を設定し、三脚を置く場所を確定します。その後、彼は待ち続けます。誰かが通ったり、一筋の光がダイナミックな模様を描いたり、天の川が上空に現れたり、完璧な瞬間が目の前に現れるまで、ただひたすらじっと待ち続けるのです。

Schnalstaler Gletscherbahn, Schnalstal, Italy
Albrecht Voss, X2D 100C, XCD 4/21

AlbrechtのModern Alpine Architectureシリーズでは、オーストリアとイタリアにある9つの現代建築物を撮影し、2021年のハッセルブラッド マスターの称号を、アーキテクチャー部門にて受賞しました。彼は、3年を費やして、このシリーズを完成させました。「写真や建築物、そしてアウトドアに対する情熱があったからこそ、こんなに長い時間をかけて、この写真シリーズを完成させることができました。」

「私はいつもフルサイズ カメラシステムを使っていたので、中判カメラで捉える映像はどんなものなのだろうかといつも考えていました。インスタグラム上の写真では、この差は比較できません。X2Dで撮影した写真のファイルを初めて開いた時、その写真が持つディテールの豊富さに、心から驚きました。

Schnalstaler Gletscherbahn, Schnalstal, Italy
Albrecht Voss, X2D 100C, XCD 4/21

Enlightenシリーズには、Albrechtがアルプスにある建築物を捉えた初期の写真からは進化した写真が収められています。彼は、Enlightenシリーズを通して、人類が自然にもたらしたものは、必ずしも汚染や破壊だけではないというメッセージを表現したいと考えていました。人類は、サステナブルな建設工程を経て、建設場所に合った素材や形、カラーを使用し、周囲環境に溶け込むシェルターや博物館、教会を建設することもしています。

Albrechtの写真シリーズの被写体となった建物の多くが、太陽光発電や浄水システムを使用して、この美しく、かつ厳しいアルプスの自然と共存しています。これが、彼が思い描く、環境など様々な点を考慮に入れた、今後のツーリズムの考え方です。

Monte Rosa Hut, Zermatt, Switzerland
Albrecht Voss, X2D 100C, XCD 4/21

このような先駆的なコンセプトを強調するために、Albrechtは、日が完全に暮れた後の夜間に、人工的な照明で映し出される建物にフォーカスを当てた写真を撮影しています。「ポストプロダクション工程では、シャドウ部分やハイライト部分のディテールを細部まで復元したり、柔軟に色調整を行ったり、かなり自由に編集することができました。今回のシリーズでは、全写真が夜間の建築物を対象にしているため、高性能のISOが必要不可欠でした。」と、Albrechtは述べています。

Rifugio Ponte di Ghiaccio, Italy
Albrecht Voss, X2D 100C, XCD 4/21

夕方になると、Albrechtはカメラをセットアップし、構図を整えると、日が沈むまでただじっと待ちます。夜になり、夜空に広がる天の川が最適な位置まで移動すると、彼はLEDライトを搭載したドローンを離陸させ、建物の上空を円状に飛行させ、上から建物を照らします。決められた経路をドローンが飛行している間、彼はX2Dを使って、長時間露光の写真を何枚か撮影します。その時、建物に様々なアングルから光が当たり、建物が幻想的な輝きを放ちます。「X2Dの性能には本当に驚きました。ISO 3200〜12800で撮影しても、画質の劣化は見られませんでした。また、レンズは高速絞りに対応し、このカメラシステムで、非常に柔軟に撮影を行うことができました。」

Rivera, Switzerland
Albrecht Voss, X2D 100C, XCD 2,5/38V

Albrechtは、Enlightenシリーズの撮影に、わずか10日しか費やすことができませんでした。たどり着くのが最も難しかった建物は、彼の長年のお気に入りであるMonte Rosa HütteとBivak pod Skutoの二つでした。Albrechtと彼のアシスタントは、厳しい条件下で、何千メートルもの高度の中移動しながら、急勾配の岩を登り、氷河の上を歩きながら、目的の場所までたどり着きました。「今の自分があるのは、粘り強く、自分の情熱を追い続けて来た結果だと思っています。自らが自発的に企画したフォトシリーズでハッセルブラッド マスターの称号を受賞することができ、とても嬉しく思っています。」




Albrecht Voss

Albrecht Vossについて

Albrecht Vossは、ハッセルブラッドマスターであり、ドイツのライプツィヒを拠点に活躍する建築写真家です。彼の作品は、建築環境を敬意を込めて撮影しており、彼のModern Alpine Architectureシリーズの写真は、2021年のハッセルブラッド マスターの称号をアーキテクチャー部門にて受賞しました。Albrechtは、2021年のEuropean Architectural Photography Prizeで注目され、2021年のFine Art Photography Awardsでノミネートされ、2022年にはDrone Talent Awardを受賞しました。

Inspiration in Every Detail