Hasselblad Heroine

Lisa Devlin


人々の一番幸せな瞬間を写真で祝福する


ファッションの世界でキャリアをスタートしたリサ・デヴリンは、音楽とセレブリティのフォトグラファーとして長年活躍した後、偶然にもウエディングの世界に飛び込みました。

リサはエディトリアルの写真を続けながらこの業界で働き、それが彼女の作品に反映され、クリエイティブでユニークなウェディングを撮影し、新しく刺激的な方法でカップルをとらえるのに役立っています。

では、どうすればウェディングフォトを仕事にできるのでしょうか?そして、どうすれば女性がこの業界で活躍できるようになるのでしょうか?リサがそのヒントを教えてくれました。


ウェディングに至るクリエイティブの道

多くのフォトグラファーがそうであるように、リサもプロになるための第一歩は、クリエイティブな分野(彼女の場合はファッションやデザイン)に進むという、より一般的な目標から始まりました。「私の最初の大きな一歩は、北アイルランドを出て、アートカレッジの準備コースに参加したことです」と彼女は言います。「その目的は、美術系の学科をいくつか体験した上で、進むべき道を選ぶことでした。しかし、1年が終わるころには、入学したときよりも迷っているような気がしました」

「そんな時にファッションスタイリングというものがあることを知り、撮影のために服を揃えるのは自分に向いている仕事かも?と思い、雑誌『The Face』の撮影で、スタイリストのアシスタントを1日体験することができたんです」

「でも現場に到着してすぐに、自分が大きな間違いをしていることを理解しました。スタイリストが何をしているのか、まったく理解できなかったのです。彼女は、ジョン・ガリアーノやヴィヴィアン・ウエストウッドなどの素晴らしい服を何棚も持っていましたが、モデルをシャツ一枚やコート一枚で撮影現場に送り込み、あるショットでは、彼女が革紐で作ったネックレス以外は全裸で撮影していたのです」

「スタイリングが自分の常識から大きく外れていたので、カメラマンをよく観察するようになったんです。驚いたことに、彼は私が理解できないようなことは何もしていなかったのです。これが私にとっての啓示であり、フォトグラファーの道を歩むきっかけとなったのです」

しかし実際にはその撮影の場で彼女は歴史的な出来事を目の当たりにしていることなど、知るよしもありませんでした。「実は、その時のフォトグラファーはマリオ・ソレンティで、モデルはケイト・モスでした。半年後、ロンドンの女の子はみんなケイトになりたがって、みんな革ひもで作ったネックレスをつけていたのです!」

ファッション写真に夢中になった後、リサは音楽の分野に進出し、有名ミュージシャンを撮影して、幼い頃からのもう一つの情熱を満たしました。

「私が知っているほとんどのウェディングフォトグラファーがそうであるように、私も友人から結婚式の撮影を依頼されたことがきっかけで、この世界に入りました。その頃すでに、私は10年以上音楽業界のカメラマンとして活躍していましたが、各地を回りながらの有名人との仕事など、以前は楽しかった仕事の部分も、その頃にはそれほどワクワクしない部分になっていました。最初は、その依頼を断りました」

「当時、結婚式の写真といえば演出が多く、形式的なものでクリエイティブとは考えられていませんでした。カメラマンは、集合写真やいかにも決まり切ったポーズをとったセットアップを撮影するだけでした。友人はせめて結婚式のカメラマン選びを手伝ってほしいと頼み、パンフレットを送ってくれました。そのどれもピンとこず、結局私は彼女の結婚式を撮影することに同意しましたが、それは雑誌のためのストーリーページのように行うことができることを条件としました。ただ形式的なことをするのではなく、私が見たままの物語を撮影したのです」

「式当日、彼女の身支度から撮影し初めて1時間後、私は今自分のしていることが好きなのだと気付きました。その日が終わるころには、ウェディングフォトのビジネスを立ち上げることを決意していました」

女性が写真家への道を踏み出すことを応援する

近年のウェディング業界は、リサの言うようなポーズをとったスタイルから、より自然で本物の愛を表現するスタイルへと大きく変貌を遂げていることは確かです。

しかし、その一方で、業界における男女平等の実現がほとんど進んでいないことに不満を感じてきたといいます。「私が結婚式の撮影を始めた頃、最も有名だったのはエリザベス・メッシーナ、ジャスミン・スター、ジュリア・ボッジオといった女性たちでした」

「これは、私にとっても業界におけるポジティブなロールモデルを提示してくれたのです。近年では、カンファレンスのラインナップや賞を独占しているのは男性フォトグラファーです。そのため、男性にとっては魅力的な職業であり、女性にとってはそうでないように思われるかもしれません」

リサは、より多くの女性が写真家として活躍するためには、キャリアの最初に手に取り、そのあとのスタイルに影響を及ぼすことになる存在であるカメラ会社とそのマーケティングキャンペーンが重要な役割を果たすと信じています。

また、女性フォトグラファーが学業からプロになることは減少していると認識していますが、ウェディングをキャリアの選択肢として考えるフォトグラファーは増えていると考えています。

「大学でゲスト講義をし、学生たちに話すことがあります。そこではいつも、ウェディングフォトグラファーになりたい人は手を挙げてくださいとお願いしています。10年前は1人か2人でしたが、最近は会場の75%くらいになりました。それは、この10年の間に、ウェディングフォトがクリエイティブなジャンルとして、また収入を得るための充実した方法として進化してきたからだと思います」

ウェディングフォトにセレブのような煌めきを加える

リサは自分の写真スタイルを「恋人たちのためにゆったりとしたイメージを作ること」と表現します。音楽活動をしていた頃の雑誌や編集写真での経験は、ウェディングの撮影にも活かされているのです。

「結婚式の前に10年間、芸能人や音楽アーティストを撮影していました。毎日、有名な人たちを撮っていました。ウエディングの世界に移ってからは、その日一日祝福される人たちを撮るようになりました。セレブリティが毎日味わっているような特別感を、被写体にも感じてほしいんです。私の作品を見ている人には、そういうことを意識してもらいたいですね」

「ウェディングフォトの業界全体を見渡してみても、自分のスタイルを確立することは、他の人と差をつけるために不可欠なことです。しかし、撮影する人に対する責任も考えなければなりません。結局のところ、一回で完璧に見えなければ、やり直しはきかないのです」

「ウェディングフォトは大きな責任を伴うものです」とリサは強調します。「どんな結婚式でも、100人のカメラマンがいれば、みんな違う写真を撮るでしょう。私たちは、人々の思い出を、感情的にも経済的にも大きな影響を与えるイベントとして、管理・編集しているのです」

「最も重要な要素は、自分よりも被写体を反映した写真を作ることです。試してみたいからという理由で、テクニックやポーズを押し付ける誘惑に駆られることがあります。しかし、クライアントが何を感じていたかを反映させるという目的を見失わないようにしなければなりません」

「良い結婚式の写真は、記録された感情を再び呼び起こすものです。音や匂いなど、他の感覚を呼び覚ますことができるのです。主役のカップルが、その一日の記憶がぼやけていくと言ったとしたら、焦点を再び合わせるのが私たちフォトグラファーの役割です」

成功の鍵は学ぶこと

ウェディングフォトは競争の激しい業界であり、全く異なるサービスに対して全く異なる金額を請求する人々で溢れています。

リサは、ウェディングフォトグラファーになりたいなら、あなたを際立たせる本当に大切な要素がいくつかあると信じています。「まず、自分の技術を学ぶこと。人々は、いきなり美容師になることを決意し、ハサミを購入して、すぐ髪をカットするために課金し始めることはありません。技術を身につけるには、それなりのプロセスが必要なのです。しかし写真に関しては、多くの人は、カメラを手に入れるだけで、結婚式の写真撮影の料金を請求する資格が得られると思っています」

「"学ぶ "という部分を省略することはできないのです。ワークショップに行く、仕事の経験を得る、次に撮影、カンファレンスに行く、外に出て、あなたが尊敬するカメラマンと撮影し、メンターを得、結婚式のカメラマンになる方法を学ぶためにできることを行い、その後、有償撮影を開始するのです」

「2つ目は、レンズへの投資です。カメラも必要ですが、それは画像を記録するための箱です。画像を作成するすべての魔法は、レンズの中にあるので、常に最高のレンズを手に入れるのです」

また、彼女はオンラインスクール「フォトグラフィー・ファーム」を通じて、ウェディングフォトグラファーとしての専門知識を提供しています。彼女は過去10年間、何千人ものウェディングフォトグラファーを指導してきました。そして、そこにいると自らの駆け出しの頃を思い出すようなコミュニティの中で、人々を最高のフォトグラファーへと育てています。

美しい中判との旅路

リサは中判写真との出会いにより、ウェディングフォトグラファーとしての差別化を図ることができました。「私がミュージシャン写真家だったころは、スタジオワークは中判を使用し、ポジフィルムで撮影していました。それがあの業界のやり方でした」

「私がウェディングの世界に入ったとき、伝統的な写真家は中判を使っていましたが、その使い方はとても堅苦しいものでした。カメラは三脚に乗せられ、ポーズも強引でした。私はあえてそれに逆らい、35mmカメラとフィルムで撮影しました。そうすることで、より親密な結婚式の感覚を得ることができたのです」

「今は皆、デジタルで撮影しています。結婚式の写真がよりクリエイティブになり、尊敬されるようになるにつれて、競争も激しくなってきました。だから、私は他の人たちと差別化を図りたいのです。」

「X1D IIで撮影した写真のクオリティは非常に高く、最近ではエディトリアルの仕事でも使っています。中判に戻るのは、とても良い選択肢だったと思っています」

「どんな結婚式に出ても、素晴らしいカメラを持っているゲストがいるものです。ハッセルブラッドで撮影することは、そのゲストと同じようなカメラを持っている場合よりも、賞賛と尊敬を得ることができます。このカメラ(X1D II)は驚くほどコンパクトなので、結婚式では何か大きなものを持ち歩いていると感じることもありません。むしろその逆ですね」

彼女はハッセルブラッドヒロインプログラムを通して、業界の女性の知名度を上げ続けることができると信じています。これは女性が業界の中で孤独を感じないようにするためにとても重要なことです。「ウェディングの撮影はシャンパンと紙吹雪にイメージされるような面だけではありません。大量のアルコールが振る舞われ、人々が抑制を解除するような環境で、女性が一人で働くことは、危険を感じることがあります」

「ウェディングを撮影する素晴らしい男性もいますし、彼らには尊敬の念を抱いていますが、業界全体を見ると男女が取り上げられるバランスが取れていないように感じています。ですからハッセルブラッドが積極的に女性フォトグラファーを祝福し、私たちをロールモデルとして押し進めるという事実は本当に素晴らしいことです」

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